まさに恋女房

　　　　　　　　　　　　　　　まさに恋女房
　八条大学社会学部二回生木下理恵は凄いと言われている。
　見れば外見は普通だ、大きな黒い目で小さなピンクのいつも微笑んでいる唇に。
　小柄な一五〇位の身体に癖のある長い黒髪に程々のスタイルといったものだ。悪くはないが整ってもいないというものだ。
　だが彼女と交際している相良当麻はいつもこう言った。理恵と同じ大学同じ学部にいる。そこで彼女と知り合って交際をはじめたのだ。
「理恵ちゃん最高だよ」
「そんなにいいか？」
「あの娘と付き合って」
「そんなにいいのか」
「ああ、あんないい娘いないよ」　
　友人達にいつもこう言っていた、相良の外見は上の方を伸ばした黒髪でやや細くきりっとした目で口は横に広い。少し面長で顎の形はいい。背は一七五程度で弓道をしているだけあって引き締まった体格である。
「本当に」
「それで付き合えて幸せだってか」
「そう言うんだな」
「この世であんないい娘は他にいない」
「そうだっていうんだな」
「そうだよ」
　実際にとだ、相良は言い切った。
「俺は幸せ者だよ」
「そんなにいいか？」
「確かにそんなに悪い外見じゃないけれどな」
「けれど普通だろ」
「普通位だろ」
　皆彼女の外見から話した。
「悪くはなくてもな」
「特によくもないだろ」
「そこまで言う娘か？」
「流石に言い過ぎだろ」
「好きだからそう言ってるのか？」
「だからそれが違うんだよ」
　まさにというのだ。
「あの娘はな」
「何処がそんなにいいんだ？」
「別にそこまでよくないだろ」
「そうだよな」
「これといってな」
「まあそれはな」
　相良はいつも笑顔で話した。
「俺だけがわかることだな」
「そういえばお前あの娘と同棲はじめたな」
「お前の部屋にあの娘が入って」
「それで暮らしはじめたな」
「ああ、そうなったよ」
　実際にというのだ。
「それで余計にわかったよ」
「そうなんだな」
「まあお前が幸せならいいけれどな」
「それでな」
「ああ、最高に幸せだよ」　
　相良は満面の笑みで言った、兎に角だった。
　彼は理恵と付き合えてかつ同棲出来て幸せのなかにあった。それでだった。
　いつも理恵のことを笑顔で話していた、しかし彼以外の誰もがその理恵について思うことがあった。
「そんなにいいか？」
「普通の娘だよな」
「顔もな」
「スタイルだってな」
「そんなによくないだろ」
「少なくともあいつがあそこまで喜ぶ様な」
「そこまでの娘じゃないだろ」
　こう思うのだった。
「幾ら何でもな」
「あそこまでべた惚れする娘か？」
「違うよな」
「そこまでじゃないだろ」
「それであそこまで言うってな」
「性格か？」
「性格いいのか？」
「それとも他に何かあるのか？」
「だとしたらそれは何だ？」　
　こう口々に言うのだった、だが。