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戦国異伝供書

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第百三十話 時が来たりてその四

「何が何かね」
「わからないのう」
「うん、どういうことか」
「今はわからんでもよい、それでもな」
「わかる時が来るの?」
「おそらくな、そして闇からな」
「織田様をなのね」
「お護りしてな」
 そうしてというのだ。
「そしてじゃ」
「祓うんだね」
「そうせよ」
 こう言うのだった。
「よいな」
「まあね」
 萌は考える顔になって言った、飛騨者達の中では一番幼いその顔をそうさせてそのうえで言うのだった。
「お父がそこまで言うなら」
「それならな」
「そうするわ、じゃあ今から」
「うむ、織田様とな」
「お会いしてだね」
「お仕えせよ、あの方は一目で人を見抜かれ」
 そうしてというのだ。
「そしてな」
「わし等をだな」
 煉獄が応えた。
「用いられるな」
「うむ、そうされるからな」
「だからか」
「是非じゃ」
 その時はというのだ。
「織田様の御前にな」
「出てか」
「見てもらうのじゃ」
 自分達自身をというのだ。
「さすればな」
「それでなんだな」
「用いて下さる」
「わし等の身分でもか」
「お主達は武士ではない」
 居士はこのことも言った。
「決してな」
「そんな者は一人もいねえぞ」
 煉獄ははっきりと言った。
「わし等はな」
「もう皆何処の誰ともわからないみなしごだよ」
 大蛇は両手を頭の後ろで組んで笑って言った。
「今はお父のところにいるけれどな」
「うむ、戦の世の中でな」
「実のお父とお母が死んでな」
「お主達の本来の生まれはわからん」
 一切、そうした言葉だった。
「若しかして武士だった者もおるかも知れんが」
「どうせ大した身分じゃないだろ」
 絡繰りも笑って言った。
「足軽だの何だのだな」
「まあそんなところだよね」
 毬は絡繰りのその言葉に応えた。
「やっぱり」
「ああ、実際にな」
「それじゃあ町人や百姓と変わらないよ」
「全くな」
「そんなものだよね」
「そうであろうな、しかも今は皆わしの子だが」
 居士はさらに言った。
「わし自身都で親をなくして商いをしておった」
「武士じゃない」 
 あや取りは一言で言った。
「お父も」
「つまり皆武士ではない」
「私は騎士の家だったと言っても」
 ヨハネスは自分のことから話した。
「だがそれは南蛮のこと、本朝では関係ありませぬ」
「だからであるな」
「皆と同じです」
 ヨハネスもというのだ。 
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