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戦国異伝供書

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第百二十九話 灰からはぐれた者達へその十

「だからな」
「教えているのですね」
「馬術もな」
「そうですか」
「うむ、そして時が来れば」
「馬に乗り」
「そしてじゃ」 
 そのうえでというのだ。
「働いてもらう」
「その時が来れば」
「そうじゃ、そしてお主達それぞれにな」
 まさにという言葉だった。
「これからもな」
「術をだな」
 絡繰りが言ってきた。
「身に着けるんだな」
「お主は特別な錫杖を渡しておるが」
「あの錫杖にある力をか」
「万全に使える様にな」
 その様にというのだ。
「なってもらう」
「わかったぜ、毎日頑張るな」
「その様にな、お主達もいれば」 
 子供達にさらに言った。
「天下人になられる方はな」
「鬼に金棒だな」
「お主達が手足となり働き」
 忍の者達としてだ。
「そしていざという時はお守りする」
「そうすればか」
「天下人になられる方も大丈夫じゃ」 
 そうだというのだ。
「一騎当千の忍の者であるお主達がな」
「一騎当千になれっていうんだな」
「要するにな」
「そしてその力でか」
「働いてもらうのじゃ」
 その天下人の為にというのだ。
「よいな」
「わかったぜ、それでだけれどな」
 絡繰りは居士に自分から言った。
「一ついいか」
「どうしたのじゃ」
「その天下人ってのは尾張におられるんだよな」
「織田家にのう」
「織田家っていうとな」
「大うつけがいる」
 今度はあや取りが言ってきた。
「この前お父自身が言った」
「そうじゃ」
 その通りだとだ、居士も答えた。
「尾張の織田家にはな」
「大うつけがいる」
「まさかと思うが」 
 拳はここで言った。
「その大うつけ殿が」
「そうじゃ、天下人なのじゃ」
「そうなのか」
「うつけ殿と言われておるが」
「実は違う」
「傾いておられるのじゃ」
 その者はというのだ。
「ただそれだけじゃ」
「傾いている、傾奇者」
「そうなのじゃ」
「傾奇者なら知ってるでやんす」
 煙が言ってきた。
「都や堺で奇矯な身なりをして己が道を往く」
「そうした人達でやんす」
「今の天下人となられる方はな」
「その傾奇者でやんすか」
「左様、それでうつけ殿と呼ばれておるが」
 それも大うつけとだ。
「しかしな」
「その実はやんすか」
「まさに天下を一つにし長い泰平の世をもたらす」
 そうしたというのだ。
「そこまでの方なのじゃ」
「人を外見で判断したらいけないってことかな」
 毬は居士の話を聞いて言った。 
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