十四個のケースの中身は
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章
十四個のケースの中身は
キャットハウスオンザキングス、殺処分をしない方針の動物保護団体でありどんな動物でも必ず引き取ることを方針としている団体がある。
その施設の前にある日だった。
十四個のプラスチックケースがありどのケースからも中からガサゴソと音がしていた、その音を聞いてだった。
団体のスタッフ達は首を傾げさせて話した。
「何かおかしいですね」
「そうですね」
「絶対に何かありますね」
「何かない方がおかしいですよ」
「この中に何があるのか」
「穴は空いてますね」
見ればどのケースもそうなっていた。
「上の蓋はきつく閉じられていて」
「穴がある」
「それでがさごそ音がするなんて」
「生きものですかね」
「誰かが夜のうちにここに置いたんですね」
「これは間違いないですね」
そのことはわかった、それでだった。
スタッフの者達はすぐにケースを空けていった、すると。
最初に団体で働いている若いヒスパニック系の男ロメオ=マルカーノ褐色の肌で眼鏡をかけた黒い縮れた短い髪の毛と黒い目の一七〇位の背の彼が言った。
「ニャア」
「猫です」
「こっちもだ」
「こっちも猫だ」
「どのケースにも猫がいるぞ」
「中には餌もある」
「じゃあ間違いないな」
「どの猫もここに捨てられたな」
「うちがどんな生きものでも引き取るから」
他のスタッフ達も口々に言った。
「そうしてるんだな」
「間違いないな」
「全く、うちが例えそうでも」
「こんなことしないで欲しいな」
「もううちには何百匹の生きものがいるんだ」
「それでこんなことするなんてな」
「人間としてマナー違反じゃないか」
そうだというのだ。
「生きものを捨てること自体が酷いことなのに」
「こんなことするな」
「どうしてこんなことするんだ」
「しかし皆助けるぞ」
「見捨てていられるか」
「うちはそういうことはしない方針だからな」
誰もそうしたことをする気はなかった、それでだった。
彼等は全てのケースを空けた、どのケースにも猫がいた。中には二匹の子猫と一緒にいる母猫がいてだった。
合わせて十六匹いた、その猫達を調べると。
生後五ヶ月から三年といった猫ばかりだった、そして。
「この猫達ですが」
「ああ、指が多い子が多いな」
マルカーノの先輩であるトニー=スペンサーが応えた、一九〇ある大男で鋭い青い目と面長の顔を持ち髪の毛は白い。筋肉質である。
「多指症の子がな」
「そうですね」
「遺伝だからな」
多指症はというのだ。
「実は」
「そうなんですね」
「ヘミングウェーの飼っていた猫もそうだったんだ」
スペンサーはマルカーノに二十世紀のアメリカを代表する文豪の名を出して説明した。
「実は」
「あの武器よさらばとかの」
「ああ、それでヘミングウェーの今もあってな」
そしてというのだ。
「そこにその猫の子孫も住んでいるんだ」
「そのままですか」
「それでその子孫の猫達もな」
彼等もというのだ。
ページ上へ戻る