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歪んだ世界の中で

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第八話 友情もその十四

「そういうことだね」
「そうです。それでどうでしょうか」
「それがいいかもね」
 考える顔になりだ。希望は真人に応えた。
「やっぱり」
「遠井君にとっては」
「考えるよ」
 真人の言葉を受けてだ。希望はまた言った。
「そうだね。一人暮らしだけじゃなくても」
「今のご家族と離れることはできますから」
「うん。けれど」
 それでもだった。一つの決意は揺るがなかった。
「もう僕は親とは一緒にいたくないんだ」
「そのことは絶対ですか」
「ずっと前から嫌だったんだ」
 感情をだ。露わにさせた言葉だった。
「二人と一緒にいるのは。親って有り難いっていうけれど」
「俗にですね」
「それは親によるよ」
「わかります。僕もですから」
 希望のその顔を見てだ。真人は述べたのだった。
「父親は」
「そうだね。友井君もだったね」
「親によります。いい親もいれば悪い親もいます」
「本当にね」
「だから虐待も起こります」
 自分の子供へのだ。それもだというのだ。
「誰もがいい親ということは有り得ません」
「善人がいて悪人がいるのと同じで」
「いい親もいればね」
「悪い親もいます」
 二人でだ。こう言ったのだった。二人は今言葉だけを重ねたのではなかった。
「ですから」
「僕はおかしくないんだ」
「いい親しかいないと思う方が。誰でも子供を可愛いと思う方が」
「おかしいよね」
「そう思います。残念ですが」
「残念だよね。僕もそう思えたらよかったのに」
 自分でだ。このことを残念に思いながらだ。希望は真人に述べた。
「よかったのに」
「仕方ないですよ。けれど家族で幸せになれないのなら」
「その他のところでだね」
「幸せになればいいですから。では」
「うん。それじゃあ」
「ご両親を別れてそうして」
 このことは真人もいいと言ってくれた。そしてなのだった。
 希望は決めたのだった。自分の家族と別々に暮らすことをだ。その決意を今固めたのだった。


第八話   完


                          2012・2・23 
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