| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

満腹だからもうこれ以上は

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

第一章

                満腹だからもうこれ以上は
 ボツワナのことである、野生動物の写真家をしているエバン=シラーとリサ=ホルツヴァルトは二人で動物達の写真を撮っていた。シラーは金髪を短くしていて顔の下半分は濃い髭で覆われている。目は青で大柄で逞しい体格だ。リサは茶色の髪の毛を後ろで束ねていて面長で顎が尖っている。茶色の目で背は一六五位ですらりとしている。二人共サファリスーツを着ている。
 撮る中でだ、リサは雌ライオンを見付けて言った。
「ああ、ヒヒを食べていますね」
「そうだね」
 シラーはリサが指差した方を見て言った。
「今は」
「ライオンが霊長類を食べるのはあまりないですが」
「撮ったかな」
「はい」
 そうしたとだ、リサは答えた。
「そうしました」
「そうしたんだね」
「はい、それでなんですが」
 リサはさらに言った。
「傍に子供がいたらしいですが」
「親が食べられたんだね」
「そうみたいですね」
「よくあることだね」
 自然の中ではとだ、シラーは述べた。
「そうしたことも」
「そうですね」
「うん、じゃあその子は早く逃げないとね」
「自分も食べられますね」
「そうなるよ」
 こう言った、そうしてだった。
 二人はそのライオンを撮っていたが。
 ヒヒの子供は硬直していた、ライオンが目の前にいればそれも当然だった。それでシラーは諦めた顔でリサに言った。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧