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闘鶏の場所から

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第二章

「けれどね」
「かませ犬にされていたのね」
「それでボロボロになっていたの」
「保護された時は」
「闘鶏場が摘発された時はね」
「犬それも人の家の犬をさらってそんなことするなんて」
「酷い人達もいるわね」
「ええ」
 同僚もこう言った。
「本物の悪人よ」
「そうよね、けれどニーナはじっと耐えて」
 エイプリルはさらに話した。
「闘鶏場で十匹も子供産んだけれど」
「お母さんになったの」
「その子達をじっと守っていたの」
「ボロボロになりながら」
「そうだったのよ」
「素晴らしい娘ね」
 同僚はその話を聞いて悲しい顔をしながらもこう言った。
「本当に」
「ええ、本当にいい娘よ」
「そうよね」
「それでその子達はそれぞれ里親を貰ったわ」
 そうなったというのだ。
「いい人達にね」
「それはよかったわね」
「それでニーナもね」
 彼もというのだ。
「今はうちに帰っているわ」
「それで何処にいるのかしら」
 同僚はニーナのいる場所をここで聞いた。
「それで」
「お家の中にいるわ、ニーナ来て」
「ワン」
 エイプリルが呼ぶとだった。
 画像の姿そのままの犬が来た、だが画像よりかなり痩せていて。
 足取りが弱い、エイプリルはその彼女を見つつ同僚に話した。
「やっと退院したばかりでね」
「それでなの」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「まだ体調は万全じゃないの」
「それはこれからね」
「ええ、けれど戻ってきてくれたから」
「それでなのね」
「もう何があっても」
 エイプリルの言葉は切実なものだった。
「別れたくないわ」
「そうね。じゃあマイクロチップも埋めて」
「二度とあんなことがない様にするわ」
「そうするのね」
「これからはね、じゃあニーナ後でお散歩に行って」
 エイプリルは戻って来た愛犬に声をかけた。
「ご飯も食べましょう」
「ワン」
 ニーナはまた鳴いて応えた、そしてだった。
 尻尾を振った、その動きはまだ元気なものではない。しかし目は生き生きとしていた。再会した家族を見てそうなっていた。


闘鶏の場所から   完


                  2021・3・21 
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