戦国異伝供書
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第百二十六話 推挙その五
「しかしじゃ」
「大宰府まで至れば」
「それで、ですな」
「大友殿が譲らずとも」
「もう九州探題でいられる大義はなくなり」
古来より九州の政の要とされてきた大宰府を奪われると、というのだ。義久は九州の守護の一人としてこのことを熟知している。
それでだ、こう言うのだ。
「もう譲らざるを得なくなる」
「左様ですな」
「ではですな」
「五万の兵で、ですな」
「まずは岩屋城を攻めて」
そしてというのだ。
「そこで一旦大友殿に迫るが」
「それでも譲られぬとなれば」
「その時は、ですな」
「さらに戦い」
「大宰府を目指すとする」
こう弟達に話した。
「それまで時は少ないがな」
「はい、やはりそろそろです」
「織田殿がご領地の政を整えられ」
「そのうえで」
「九州に来られるな、何でもな」
信長のこともだ、義久は話した。
「検地に刀狩りまで行われしかもな」
「天下の政もですな」
「整えられた」
「まだ幕府は開いておられませぬが」
「それが開ける様な」
「そうしたところまで至ったとか」
「そうなればじゃ」
ここまで政を進めればとだ、義久は家臣達に話した。
「まさにな」
「左様ですな」
「後は九州ですな」
「九州を収めれば天下統一となる」
「だからですな」
「その時が来ておる、当家は天下は望まぬ」
決してとだ、義久は言い切った。
「そうであるな」
「はい、当家はあくまで三国の守護です」
「薩摩と大隅、日向の」
「確かに九州探題の職をと決めましたが」
「それでもです」
「このことは変わらぬ」
三国の守護であることはというのだ。
「だからな」
「決してですな」
「天下を望むことはない」
「だから織田殿と争うこともない」
「天下の政に従いますな」
「うむ」
その通りだというのだ。
「そこは変わらぬ」
「左様ですな」
「では、ですな」
「織田殿が動かれる前に」
「九州探題になりますな」
「そうなってじゃ」
そしてというのだ。
「よしとする」
「ですな」
「では織田殿が動かれる前に」
「九州探題となりましょうぞ」
「必ず」
「その様にする」
こう言ってだった。
義久は出陣を命じてそのうえで自身も出陣することにした、そのことを告げてから彼はまた弟達に話した。
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