戦国異伝供書
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第百二十三話 耳川の戦いその八
「法螺貝を鳴らさせる、それまでな」
「はい、それでは」
「それまでです」
「待ちます」
「そうします」
「そうせよ」
絶対にと言ってだ、まだ待たせ。
そしてだった、遂に大友家の軍勢が川を半ばまで渡った。
歳久はそれを見て兄に言った。
「兄上、時です」
「まさにな」
「それでは」
「皆の者よくここまで待った」
こう兵達に言った。
「ではこれよりじゃ」
「遂にですな」
「法螺貝を鳴らしますな」
「そうしますな」
「攻めのそれを鳴らすのじゃ」
まさにそれをというのだ。
「よいな、そして法螺貝が鳴れば」
「はい、すぐさまですな」
「一斉に攻める」
「そうしますな」
「敵は最早袋の鼠じゃ」
島津軍から見てそうだというのだ。
「だからじゃ」
「はい、ここは」
「一気に攻めましょう」
「そして勝ちましょう」
「敵の首は好きなだけ取れ」
こうも言った。
「褒美は思いのままじゃ」
「まさにですな」
「そうですな」
「だからこそ」
「そうじゃ、敵を倒して倒して倒し尽くすのじゃ」
こう言って法螺貝を一斉に鳴らさせた、すると。
島津家の軍勢四万は一斉に喜び、攻められるその雄叫びを挙げてそうして大友家の軍勢に向かった。
槍や刀を手に鉄砲を駆けつつ放つ、それは前から攻める者達だけでなく。
伏兵や高城にいる者達もだった、彼等は一斉にだった。
歓声を挙げて大友家の軍勢に襲い掛かった、島津家の軍勢は凄まじい速さで敵に殺到しそうしてだった。
鉄砲を弓矢も放ち槍を突き立て。
切り込んだ、まさに命知らずの猛者達がそうして戦い。
義弘は自ら刀を抜き兵達に告げた。
「目の前にいる橙の具足や旗でない者は切れ!」
「島津家の者ではないので」
「だからですな」
「当家の色は橙じゃ」
まさにこの色だというのだ。
「その色でないならじゃ」
「敵ですな」
「大友家の軍勢ですな」
「それが何よりの証ですな」
「これだけわかりやすいものはないであろう」
色、それがというのだ。
「ならよいな」
「承知しております」
「ではです」
「橙でない者を切っていきます」
「そうして功を挙げよ」
それをというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「では切っていきます」
「そして首を取っていきまする」
「その様にな、今が功の挙げ時じゃ」
義弘自身こう言って刀を振るう、それは家久も同じで。
自ら刀を抜いて戦い兵達に告げた。
「攻めよ!敵を討て!」
「そして首をですな」
「それを取れと」
「そう言われますな」
「そうじゃ、一つ取れは二つじゃ」
敵の首をというのだ。
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