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戦国異伝供書

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第百二十三話 耳川の戦いその四

「朝早くからな、そして我等もな」
「今のうちにですな」
「飯を食い」
「そして夜もですか」
「日が出る前に起きてじゃ」
 暗いうちにというのだ。
「そしてな」
「飯を食う」
「そうするのですな」
「そのうちに」
「そうじゃ、干し飯を食うのじゃ」
 朝はというのだ。
「よいな」
「そして腹をこしらえ」
「敵が来たならば」
「存分に戦う」
「そうする、腹が減ってはな」
 それではというのだ。
「戦は出来ぬからな」
「干し飯は充分にあります」
 ここで言ってきたのは歳久だった。
「では」
「その干し飯を食ってな」
「そうしてですな」
「朝に戦う、敵が川を渡って来たなら」
 耳川、をこをというのだ。
「思う存分攻めるぞ」
「鉄砲を駆けつつ撃ちますな」
 家久はこう兄に問うた。
「そうしますな」
「うむ」
 義久は家久にも答えた。
「そうしてな」
「一気に攻めますな」
「これまで通りにな」
「敵に突っ込み」
「突き崩す、敵の軍勢を川に着き落とすぞ」
「文字通りに」
「攻めるのは川を半ばまで渡ったところでな」
 敵の軍勢がというのだ。
「一気に攻めるぞ」
「その時にですな」
「兵法にあるな」
「はい、敵は川を半ば渡ったところで攻める」
「まさにその時にな、そこで法螺貝を一斉に吹き」
 島津家の軍勢のそれをだ。
「川の向こうの伏兵にも高城の兵達にもな」
「攻める様にですな」
 義弘は強い声で言った。
「知らせますな」
「川の向こう岸にいて攻めるよりも渡らせるきるよりもな」
「それがよいですな」
「半ばで攻め」
 そしてというのだ。
「囲む様にしてじゃ」
「攻めてそうして」
「敵を前からも後ろからもな」
 川を渡る途中の軍勢をというのだ。
「攻めてな」
「釣り野伏せで」
「そうしてじゃ」
「勝ちますか」
「そうじゃ、よいな」
「それでは」
「そして敵を散々に破り」
 それからのこともだ、義久は話した。
「逃げるところを追ってな」
「さらに破りますな」
「ここで二度と日向に攻め込んで来ぬまでにな」
「その様にして」
「日向から出てもらう」 
 島津家の領地からというのだ。 
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