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戦国異伝供書

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第百二十三話 耳川の戦いその一

                第百二十三話  耳川の戦い
 義久は耳川の向こう岸に布陣した、その時にはもう大友家の軍勢は動いていて向こう岸にいた。その彼等を見て義久は言った。
「動こうとする兵と動かぬ兵がおるな」
「ですな、大友家の軍勢はそうした動きです」
「意見が分かれていて」
「攻めるべきと様子見と二つに分かれていますな」
「そうなっていますな」
「うむ、ここで敵の一部が渡るなら」
 どうするかとだ、義久は言った。
「その軍勢を叩く、そして全軍で来るならな」
「川を渡ったところで、ですな」
「釣り野伏せですな」
「それを仕掛けますな」
「その様にする、そうして攻めてな」
 そしてというのだ。
「敵を倒すぞ」
「はい、しかし兄上」
 ここで歳久が敵を観つつ彼に言ってきた。
「敵も多くの鉄砲を持ち」
「そうであるな」
「しかもです」
 敵のある場所を指差した、そこにはだった。
 二門の大砲があった、その大砲を指差して話した。
「あれがあります」
「国崩しか」
「あれがありますので」
「我等も迂闊には攻められぬ」
「そうです、迂闊に仕掛ければ」
 その時はというのだ。
「敗れるのはです」
「我等であるな」
「そうかと」
 こう言うのだった。
「その時は」
「わかっておる、だからな」
「それで、ですな」
「迂闊にはな」
 それは決してとだ、義久も答えた。
「それはせぬ」
「左様ですな」
「だから敵が川を渡るまでな」
「待ちますな」
「このまま高城を攻めることも考えられますが」
 家久も言ってきた。
「若しそれをすれば」
「そこを衝く」
「こちらが一気に川を渡り」
「その様にする、大友家もそれがわかっておる」
「だからですな」
「我等がここにおる限りはな」
 家久にも話した。
「敵は高城はもう攻めぬ」
「左様ですな」
「だからな」
「敵が川を渡るかどうか」
「それが問題じゃ、さてどうしてくるか」
「どれだけの軍勢が何時渡って来るか」
「それが問題じゃ」
 義久は話した。
「敵がな」
「兄上、敵は大友殿がおられず」
 主である彼がとだ、義弘も言ってきた。
「それで、です」
「まとまりがないな」
「必ず血気に逸る者が勝手に動き」
 そうしてというのだ。
「そのうえで」
「それに引き摺られてであるな」
「慎重な者も動きます」
「それで川を渡って来るな」
「そうかと」
「しかも川の流れは強い」
 義久は今度は耳川を見た、見れば水の流れが強い。 
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