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戦国異伝供書

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第百二十二話 大友家動くその十

「だからな」
「そのことは別にいいですな」
「今は平家であられても」
「源氏と名乗られれば」
「そこは理由をつけてな」
 そうしてというのだ。
「やっていける」
「だからですか」
「幕府も開ける」
「織田家でも」
「左様、もう天下人であられるからな」
 そうなっているからというのだ。
「それは許される、それだけのものをお持ちだからな」
「それ故にですね」
「幕府を開くことが出来て」
「そしてこれからもですか」
「天下を治め」
 そうしてというのだ。
「泰平をもたらすこともな」
「長い戦国の世でしたが」
「織田殿によって」
「それも終わりますか」
「間もなくな、しかしな」
 それでもとだ、義久はさらに話あした。
「この九州はまだじゃ」
「その織田殿の力が及んでいない」
「だからですな」
「まだ戦が続きますな」
「我等も戦っておるしな」
 他ならぬ島津家つまり自分達もというのだ。
「三国も守らねばならん」
「大友家から」
「そして龍造寺家が来るなら」
「あの家とも」
「そうなる、戦い」
 そしてというのだ。
「そのうえでな」
「国を守る」
「我等の国を」
「そうしていきますな」
「戦国では己を守るのは己じゃ」
 義久は言い切った。
「その他の誰でもないな」
「確かに」
「まさにその通りです」
「天下の法が意味を為さなくなっているので」
「だからな、耳川に行ってな」
 そしてというのだ。
「戦うぞ」
「わかりました」
「それではです」
「これから行きましょうぞ」
「そうするぞ」
 こう言ってだった、義久は戦い続けた。そしてだった。
 義久は軍勢を遂に耳川まであと少しの距離まで至った、そこで先陣からの報を聞いてそれで言った。
「うむ、まだか」
「はい、大友家は高城に張り付いています」
 報をする旗本が答えた。
「まだ」
「我等に気付かず」
「城攻めに専念しておるか」
「攻めあぐねています」
「ここまでは万全じゃ」
 義久はここまで聞いて言った。
「まさにな」
「左様ですな」
「そうじゃ、ではな」
「それではですな」
「このまま進み」
「耳川の北岸に着き」
「敵の前に姿を現す」
 その様にするというのだ。 
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