戦国異伝供書
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百二十二話 大友家動くその七
「大友家の軍勢は我等との戦で足掛かりをもうけられぬ」
「逆に高城を残したままの戦となる」
「それがどれだけ大きいか」
島津家にとってというのだ。
「敵に足掛かりがないことが」
「それをもうけさせず」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「高城を背にするか囲んだままな」
「我等との戦に入る」
「これは足枷じゃ」
大友家にとってというのだ。
「大きなな」
「我等が来るまでの足止めだけではないのですな」
「そうした意味もあった、ではな」
義久はさらに話した。
「我等はな」
「このままですな」
「耳川に向かう」
あの川にというのだ。
「あの川の北岸にな」
「そこに布陣して」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「戦に入る」
「そうしますか」
「左様、ここまでは上手くいっておる」
島津家から見てというのだ。
「ならな」
「これからもですな」
「上手くいく様にしよう」
義久は今の報を聞いて述べた、そして今度は大友家が高城を攻めあぐねていることを聞いた。するとこう言った。
「あの城におる兵は五百」
「それでもですな」
「その兵は強い」
「そして城は山の上にある」
「かつ守りを堅固にしていた」
「だからですな」
「四万の兵で攻めてもじゃ」
例えそうしてもというのだ。
「容易に攻め落とせぬ」
「左様ですな」
「だからですな」
「このまま攻めさせる」
「我等が来るまで」
「我等が動いたのは大友家もわかっておる」
敵である彼等もというのだ。
「しかし我等が来る時は遅いと考えておる」
「そこも狙い目ですな」
「我等は耳川の北にすぐに着く」
「そうしますな」
「これより」
「動けば風じゃ」
義久はここでも武田家の話をした。
「風の様に速く動いてじゃ」
「戦の場に着く」
「そうしますな」
「それが今ですな」
「そうじゃ」
家臣達に強い声で答えた。
「まさにな、ではな」
「はい、大友家を驚かしてやりましょう」
「これよりすぐに耳川の北に着き」
「そのうえで」
「先んずれば人を制す」
今度はこの言葉を出した。
「項王も言っておったな」
「そうでしたな」
「大友家が思うよりも遥かに速く耳川の北に着き」
「そのうえで、ですな」
「戦いますな」
「そうする」
まさにというのだ。
ページ上へ戻る