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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十六話 軍師達、狐を見るのことその七

「そうしてるんだよ」
「脱走はできなかったのではないでしゅか?」
「それでも時々な」
「成程。そうでしゅか」
「時々無性にな。うどんとか食いたくなるだろ」
「麺類はそうでしゅよね」
「だから今こうして食ってるんだよ」
 それでだというのだ。わざわざ脱走してだ。
 そのうどんをひたすらすする。その中でだ。
 彼はまただ。チンに話した。
「で、とにかくな」
「今はうどんを食べるのでしゅね」
「ああ、何杯でもな」
 こうして実際に何杯もおかわりをしていた。そしてだ。
 十杯を食べ終えてからだ。もう一杯おかわりしようとすると。
 いきなりだ。その脳天にだ。
 後ろからネリチャギが来た。それを受けてだ。
 沈んだ彼の後ろにだ。キムが出て来た。その彼が言うのだった。
「全く何処に逃げたかと思えば」
「ここにいたのですか」
 ジョンもいた。二人一緒にいた。
「修業をさぼるとはいい度胸だ」
「これはいつも以上のお仕置きが必要ですね」
「うう、怖いでしゅね」
 チンも二人を見てかなり引いている。ラーメンをすするその手が止まっている。
「踵落としからそれでしゅか」
「んっ?悪事には報いが当然ですが」
「それは違うのですか?」
「勘弁して欲しいでしゅね」
 やはりだ。脛に傷があるからこそ言うチンだった。
「私としては」
「悪はこうして更正していかなければ」
「ですから」
「ううむ、そういえばこの人は」
 そのだ。五郎八はというと。
「かなり酷いことをしてきたそうですが」
「はい、卑劣の極みでした」
「唾棄すべきまでのことをしてきました」
 二人はだ。少なくとも嘘は言っていなかった。
「ですからこうしてです」
「更正を目指しているのです」
「山崎さん達と同じでしゅね」
 彼等も相変わらず捕まっているのだ。
「やっぱり。更正させる為にでしゅね」
「はい、修業と労働です」
「その日々です」
「まあ私は入っていないからいいでしゅが」
 密かに逃げに入るチンだった。
「それならそれでいいでしゅ」
「はい、それではです」
「これから修業がありますので」
 二人はそのまま五郎八を引き摺っていきだ。その修業に戻るのだった。その修業はというと。
 今日はただひたすら走っていた。しかも全速力でだ。そんな彼等を見てだ。
 張遼もだ。都の城壁の上で胡坐をかいて酒を飲みつつだ。こう言うのだった。
「ほんまあの二人は怖いな」
「怖いのだな」
「ああ。めっちゃ怖いわ」
 先頭にいるキムとジョンを見ての言葉だ。
「自分等も同じことするさかいな」
「確かにな。自分がしないということはないな」
 関羽は張遼の横に立っている。そのうえで彼女と話しているのだ。尚その右手にはいつも通り得物がある。それは離していない。
「決してな」
「そこが怖いわ」
「率先垂範だな」
「人に言うのは簡単や」
 それはだというのだ。
「けれどや。それを自分がやるのはや」
「難しいな」
「それが一番難しいさかいな」
「そうだな。人にあれこれ言ってもな」
「自分もそれをする奴は少ない」
 どうしてもだ。人には言えても実践は難しいというのだ。
 
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