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戦国異伝供書

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第百二十二話 大友家動くその二

「高城は陥とされかねぬ」
「ですからそれもよくはありませぬ」
「だからな」
「はい、敵の動きをよく見て」
 そうしてというのだ。
「これはという時にです」
「出るべきである」
「左様です、では」
「皆の者今は身構えるのじゃ」
 義久は家臣達に告げた。
「大友家の軍勢には常に多くの見張りをつけておる」
「だからですな」
「動きはよくわかりますな」
「それで、ですな」
「その動きに合わせて」
「こちらも動きますな」
「その様にする」
 こう言ってだった。
 義久は今は軍勢を見ているだけであった、そうして戦の用意を着々と進めていった。そうしてだった。
 大友家の軍勢は豊後に入りさらに南下していた、ここで義久に報が入った。その報はどういったものかというと。
「そうか、龍造寺家は様子見か」
「敢えて攻めようとせず」
 肥前から帰った忍の者が義久に告げていた。
「そのうえで、です」
「我等の戦を見ておるか」
「はい」
 そうだというのだ。
「あの家は」
「今はそうか」
「動くつもりはない様です、ただ」
「肥前を手中に収めてな」
「その後は筑後、そして」
「肥後にもであるな」
「来る気配があります」
 忍の者は義久に話した。
「特に肥後に肥前の島を伝って」
「そのうえで来るか」
「どうやら」
「肥後は当家の領地ではないがな」
「それでもですな」
「そこから薩摩はすぐじゃ」
 目と鼻の先だとだ、義久は指摘した。
「肥後の全てを渡してはならんな」
「そうなりますな」
「だからな」
「それで、ですな」
「龍造寺家についても見ておく」
「これからも」
「その様にする」
 こう忍の者に述べた。
「では引き続きな」
「龍造寺家もですか」
「見ておく様に」
「それでは」
「大友家との戦はあるが」
 それでもというのだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「龍造寺家もある故に」
「あの家も見ておき」
「そのうえでな」
「何かあれば動く」
 その様にするというのだ。
「よいな」
「さすれば」
 忍の者は義久に応え気配を消した、最初から姿は見せていなかったが今度は気配もそうした。そうしてだった。
 義久は龍造寺家を見つつ大友家との戦の用意を進めていった、四万の兵がすぐに集まり動ける様になり。
 大友家が日向に入ったと聞いた、義久はその彼等の動きを聞いて言った。
「日向の神社や仏閣もか」
「はい、壊しています」
「道の途中にあるものは」
「そうしつつ進んできています」
「大隅の方に」
「領地の神社や寺を壊すなぞ許せぬが」
 義久は袖の中で腕を組みつつ言った。 
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