魔法剣姫リリカルなのは~堕天の騎士王~
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プロローグ
赤く染まった闇の天空。赤く染まった血の大地。
私と奴等は此処で殺し合っていた。
私が握るのは西洋の剣。名剣で波うっているかのような形状のフランベルジュ。
対して私と相対している奴等が持つのは改造に改造を重ねた拳銃や単分子切断ナイフ。
その中でも一人だけ私とはまた違った西洋剣を持った男が口を開く。
「今まで散々やってくれたな騎士姫」
<終わりの楽園>の中でも<剣狼>と呼ばれ恐れられる大幹部のリーダーが笑みを浮かべる。
「貴様等のような屑を殺すのに情けなど必要ないからな。」
「ふん。文句だけ垂れ、自身では動かん愚民共何ぞ生きている価値など在りはしないだろう」
嘲りを浮かべ笑う剣狼。
「貴様等は殺り過ぎた。無関係な人間を巻き込んだ時点でその行いに正当性は消滅した」
「偽りの平和を甘んじて浸る愚者達も我々《終りの楽園》の標的だ。」
「罪無き者にまで手を出すなら私も黙って見過ごす訳にはいかないからな。」
「ならば問答はここまでだ。」
剣狼は腰に差した剣を抜き放つ。
「私は貴様等を此処で討つ」
私も剣を地面に着けるかのように下げ、構える。
「死ぬがいい騎士姫………いや、≪堕ちた騎士王≫“アルト・M(御劔)・オルタ”!!」
「行くぞ貴様等……覚悟は充分か!!」
合図など無い。
私は大地を砕く程の力を入れて奴等の中央に一息で踏み込む。
だが奴等も幹部に値する人間。それが五人に大幹部もいるんだ、生半可な行動で倒せる訳がない。
消えたような速度で私は問答していた男の右斜め後ろの男の懐に入り込む。
「甘い!!」
だが振り抜いた剣は宙を斬る。
「ハッ!!」
だが振り抜いた勢いを使って一回転。遠心力を加えた横斬りを食らわせる。
「グッ!!」
何とか下がった事で腹を深く斬った程度で済んだようだ。だがこれで激しい行動は取れない。私は止めを刺そうと剣を振り上げる。
「こっちがお留守だぜ!!」
横から銃弾が撃たれる。私は剣で危険な弾丸だけを斬り落とす。
戦場を剣一本で渡り歩いていると、このような業も自然と身に付いた。
だが、斬り伏せようとした男の銃弾が剣に触れたと同時に爆発。目が眩んだ瞬間に後方から発射された銃弾が私の右胸を撃ち抜いた。
右肺を撃ち抜かれた。即死級の箇所ではないが、最も危険な箇所の一つというのは変わらない。
息が出来ない。激痛が走る。血が吹き出す。血を吐き出す。
だが止まらない。
此処で私が退けば更なる罪無き者が危険に晒される。
それに何より………私の身内を殺したコイツらを私が赦す事が出来ない。
「ぐっ………ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
私はさらに踏み込んで近くの男を斬り殺す。ナイフが私の目を貫く。
私は、胸を撃ち抜いた男を右目を刺し貫いたナイフを抜いて首を貫いて殺す。
手榴弾が投げ込まれる。咄嗟に蹴り返して首から血を吹き出す男を盾にして爆風から身を守る。
モウモウと立ち込める煙の中を私は突っ込む。無造作に撃ち込まれる銃弾は私の身体を貫く。だが即死の箇所を重点的に護る。
左腕が肩から吹き飛んだ。だが右腕があるから支障は無い。
銃弾が私の身体を撃ち抜いた方向に縮地歩法で踏み込んで右肩から左腰の斜めに斬り断つ。
ズレテ地に伏す男には目もくれず私は残り二人と剣狼と相対する。
「まさか右肺に穴が空いて右目を貫かれた状態で三人も殺られるとはな……流石と言いようがないなぁ。だがそんな傷で俺達を殺せると思っているのか?」
「はぁはぁはぁ。殺……せる………じゃな…く……殺す……んだ……」
私は霞んできた目に力を入れて感覚が殆どない残った右腕に喝を入れて残った息を吐く。
「私の……全身……全霊……を掛けて……此処で……殺……す……!!!!」
私は咆哮を上げ斬り掛かる。
振り下ろす剣。一人の体を断つ。横からナイフが飛来し私の側頭部に突き刺さる。
直ぐには死なない。私は側頭部に突き刺さったナイフを思いっきり振り絞って投げた。
私の投げたナイフは最後の幹部の心臓を貫いた。
「おいおいおい、頭にナイフ刺さって何で死んでねぇんだ?本当に人間か?」
「あ………ぐ………っ!」
意識が朦朧とする。流石に頭に突き刺さっては耐えきれない。
けど、こいつだけでも道連れに………
私はその場で一回転。
まさしく全身全霊を込め、投擲された剣は確かに剣狼の心臓を貫いた。
意識が朦朧とするなか………私は確かに見た。
喜び、歓喜した、私が護り抜いた者達の、姿を。
「が……いい」
声が聴こえる。
頭を貫かれ死んだ筈の私の耳に声が入った。
「(私は………死んだのでは………無いのか?)」
「起きるが良い。騎士王アルト」
私は痛みが走る体に眉をしかめながら目を開ける。
私は見たことの無い世界にいた。
地面も、空も、周りも、全てが真っ白い世界。
地面が無いのに私は寝そべている。
「目が覚めたかの」
そして、私を見下ろす白い老人が立っていた。
その老人を見た瞬間、私の背筋に寒気が走った。
そこに居るのに気配がしない。知覚出来ているのにまるで幻影と相対しているかのようだ。
私が百人いて束で挑み掛かったとしても傷一つ付ける事も出来ずに殺されるだろう。
私は震える体に力を入れながら起き上がる。
「あなた様はいったい………」
「儂か?儂は俗一般的に《神》と呼ばれる存在じゃ」
神……?
「まさか………いや、もしそれが本当ならこの空間にこの存在感も納得出来る。いやしかし………」
「まぁいきなり言っても信じられないないだろうからそこは省略するがの?儂がお主の前に現れたのには理由があるのじゃ」
「理由?」
うむっと神様は長い髭を撫でながら私の目を見る。
「それはな?《終わりの楽園》に関してなのじゃ」
っ!!私の中で何かが燃え上がった。
「奴等がどうしたのですか?」
「それについてじゃ。まず儂は主らの言葉で現すならば《創成の主神》じゃ。数多の神々を生み出した」
「主神………」
「だが儂が生み出したのはあくまでも善に値する神じゃ。善と悪は二つで一つ。悪に位置する儂と同程度の力を持つ神《創成の邪神》が奴等《終わりの楽園》に接触したのじゃ。今の儂のように」
「邪神に奴等………」
「邪神は《終わりの楽園》に力を与えて他なる世界へ遊びの為に送り込んだのだ」
「他なる世界?」
「俗に主の世界は《観測世界》観て識る世界。他なる世界はお主の世界とは違った世界……言わば並行世界や鑑賞世界じゃ」
鑑賞世界?聞いたことのない言葉だ。そんな私の考えを読んだのか続きを話して下さる。
「鑑賞世界とはお主の世界にあったマンガやアニメ、ゲームといった物語、鑑賞していた世界を指す」
「だが実際に鑑賞世界は観測世界として存在しており、そう言った世界に邪神は送り込んだのだ」
「鑑賞世界に………奴等が………」
「そこでなんじゃがお主、《終わりの楽園》を滅ぼす為に言ってはくれぬか?」
「私が………ですか?」
「神は下界にあまり干渉してはならぬ。じゃからお主に力を……異能を授け駆逐してきて貰おうかと思っての。どうじゃろうか?」
「………答えは決まっております」
そう………私は
「行かせて下さい。必ず壊滅させます」
そう誓ったのだから。
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