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瞳の中の想い

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第四章

「そのうえでな」
「説明されますか」
「そうする、では今から説明する」
 博士は落ち着き払っていた、そしてだった。
 実際に彼は彼等に向けて話した。
「ミドリの心は人間です」
「だからですか」
「彼女は人間である」
「そうなのですか」
「そうです、例えですが」
 会見の場で答えた、マスコミのフラッシュや意見にも臆していなかった。そのうえで淡々と話していく。
「エリザベート=バートリーは人間でしょうか」
「あの血塗れの伯爵夫人ですか」
「多くの女性を殺してその血に身体を浸していた」
「あの人ですね」
「ハンガリーの」
「彼女は人間でしょうか」
 こう問うのだった。
「そしてフリッツ=ハールマンは」
「あの食人鬼ですか」
「一次大戦後のドイツに現れた」
「何十人もの少年を食い殺したという」
「彼もまた人間でしょうか」
 こう問うのだった。
「果たして」
「そう言われますと」
「彼等は人間ではないかも知れないですね」
「あれだけ多くの人を殺したのです」
「しかも美貌や嗜好の為に」
「それならば」
「そうです、彼等は人間ではないでしょう」
 博士の言葉は冷静なままだった。
「そう言えますね」
「はい、確かに」
「そう言われますと」
「彼等は人間ではないです」
「魔物です」
「人ではない何かです」
「それは彼等の心がそうだからです」
 人でない何かになっているからだというのだ。
「彼等は人間ではありません、そして」
「貴方の娘さんはですか」
「ミドリさんはですか」
「人間ですか」
「人間の心があるから」
「そうです」
 まさにというのだ。
「私の娘はそうです」
「人間ですか」
「人間なのですか」
「娘さんは」
「そうなのですか」
「人間であり私の娘です」
 博士は強い声で言い切った。
「そうなのです」
「左様ですか」
「それが博士のお考えですね」
「そうなのですね」
「私は確信しています」
 まさにというのだ。
「そのことを」
「そうですか」
「娘さんは人間ですか」
「人間の心を持っておられるからこそ」
「ミドリの身体はアンドロイドです」
 博士はこのことも自分から言った。
「ですがそれはです」
「身体だけのこと」
「問題は心」
「そうなのですね」
「そうだ、そうする」
 こう言ってそうしてだった。
 博士はこの会見の後も何かあると世間に自分の考えを伝えた。
 そのことを繰り返した、するとミドリは彼に言った。
「お父さん、私の為に」
「当然のことだよ」
 気遣う娘にだ、博士は微笑んで答えた。
「このことは」
「当然?」
「娘のことだからな」
 だからだというのだ。 
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