釣りガールでも
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第三章
「だから実際にまた波止場行けばわかるわよ」
「そうなの」
「そう、だから今から行こう、ただしね」
千明はここからはやや強い口調で話した。
「釣り道具は持って行かないで」
「行くだけなの」
「そうしよう」
こう言うのだった。
「それでわかるから」
「そうね、千明ちゃんがそう言うのなら」
それならとだ、ゆみりも頷いた。そうしてだった。
二人で一緒に朝と夕方に釣りを楽しんだ波止場に行った、するとそこには。
救命胴衣を着てかなり厚い手袋を着たおじさんが釣りを一人楽しんでいた、そしておじさんの蕎麦のバケツには。
やけにゴツゴツした魚がいた、ゆみりはその魚を見て眉を曇らせた。
「オコゼよね」
「そうよ、ここオコゼもいるのよ」
「そうだったの」
「それで夜になったら」
その時にというのだ。
「よく出て来てね」
「釣れるの」
「オコゼって毒あるでしょ」
「鰭にね」
ゆみりもこのことは知っていた、それで千明にも答えた。
「あるわね」
「だから迂闊に釣ったらね」
その時はというのだ。
「危ないのよ」
「鰭に刺されるから」
「あとエイもいるしね」
「エイもなの」
「時々アカエイも連れたりするから」
「アカエイも危ないわよね」
この魚についてもだ、ゆみりは知っていた答えた。
「そうよね」
「ええ、尻尾の付け根のところにね」
「鉛筆みたいな毒針あるわね」
「あれに刺されるだけで大怪我で」
その大きな針にというのだ。
「それでね」
「おまけに毒があるから」
「だからね」
それでというのだ。
「下手したら死ぬから」
「危ないのね」
「この辺りの海にはいないけれどウツボとかオオカミウオとか夜に釣ったら」
「どっちも凄い狂暴ね」
「お昼に釣っても危ないのに」
「夜だと余計ね」
「だからね」
それでというのだ。
「私もしないのよ」
「夜釣りは危ないの」
「川とか湖でもね」
「ああ、足場つるっていったら」
「夜のお水は危ないでしょ」
「お昼よりもね」
「見えないから」
その分というのだ。
「お昼よりも遥かにね」
「だからおじさんもなの」
「救命胴衣着けてるのよ」
「万が一に備えて」
「そうなの」
実際にというのだ。
「そうしているのよ」
「そういうことね」
「しかもね」
千明はゆみりにさらに話した。
「若し夜に海に落ちて鮫がいたら」
「鮫って基本夜行性だったわね」
「そうよ、回遊魚だからいつも泳いでいるけれど」
当然昼もというのだ、鮫という魚はその多くが常に泳いでいないといけない身体の構造になっているのだ。
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