おっちょこちょいのかよちゃん
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111 本拠地にて
前書き
《前回》
護符争奪戦の舞台となった名古屋から戻って来たかよ子達は落ち着きのないクリスマス・イブの晩餐を迎える。その頃、笹山に嫌われ、合唱コンクールでのミスを皆から非難され絶望を感じていた藤木は謎の女性に出会う。女性は「楽しい所に連れて行く」「嫁を用意する」という条件で藤木を見知らぬ地へと連れて行く。そして赤軍は護符、杖、杯を何としても手に入れる為に次の手に取り掛かるのであった!!
今回はクリスマス・イブの後の話かつ、日本各地で異世界の道具を貰い、今後かよちゃん達と関わるであろう人達の外伝となります。
静岡県・清水市内にある藤木夫妻は共働きであった。二人共、家で待っている息子の為に早めに帰って皆で楽しくクリスマス・イブを楽しもうとしていた。だが、二人がそれぞれの職場から帰ってくると・・・。
「あれ、茂がいないわ」
「一体どこで何をしているんだ?」
夫妻は息子の友達の家へ電話を掛けた。だが、どのクラスメイトの家にも息子が遊びに行ったという情報はなく、いつまでも息子が帰ってくる気配もない為、不安になった二人は警察へ捜索願を提出する事になった。
かよ子は自身の失態が隣の家のおばさんの娘が襲われる事に繋がった事で罪悪感を感じていた。そんな中、かよ子は好きな男子の顔が頭に浮かんだ。その男子は親友と運動会の時、一時喧嘩したが、合唱コンクールを機にやっと仲直りできた。なのに、元の日常を修復する事はできるのか。
(杉山君・・・。私、どうすればいいの・・・?)
とある世界。ここは抗争など争い、いわば「戦争」を正義とする世界である。レーニンは漢服を来た女性を呼んでいた。
「妲己よ。あんな冴えるように見えぬ男子を連れて本当に役に立つのかね?」
「ご安心くださいませ。あの坊やは拒否反応を一切していませんわ。この地で楽しくさせています。それにあの坊やは挨拶代わりに『卑怯』と呼ばれているそうで、意外と役に立つかもしれませんよ」
「なら、よかろう・・・」
「他に何か?」
「いや、使えるならそれでよいのだ。帰ってよろしい」
「はい」
妲己は自分が住んでいる所へと帰る。
(あの坊やも不自由なくさせておかないと・・・。それから、あの坊やは確か恋に溺れる者・・・。でも、嘗ての恋人から愛想を尽かされた・・・。さて、嫁はどのような者がお似合いなのかしら・・・)
そして妲己は考える。
(なるべく美しい可憐な者が良かろう・・・。この世の人間か・・・。それともまだ生きている娘をさらうか・・・)
そして平和などを正義とする世界とどう戦うか、考えなければならなかった。連れて来た少年をどう利用すべきか・・・。
赤軍の本部。山田義昭は例の機械を量産する。
「あの機械が壊れる原因としては・・・」
義昭は考える。和光及び彼が東アジア反日武装戦線に渡して杯の所有者を狙おうとした時は、平和の世界から来たという人間の能力であっけなく破壊されてしまった。さらに、名古屋にて護符の所有者から護符を奪い取りに奥平や岡本を派遣させた時も同様に破壊された。
(奴等の能力で壊れるのなら、どのような対策が必要なのか・・・)
義昭にはその答えが出なかった。
「義昭」
「ふ、房子総長!!」
義昭は房子がいきなり現れた事に驚いた。
「機械の破壊の理由が分かっても対策がでなければ仕方ないわよね」
「はい、そうなんです・・・」
「なら、大量に量産しておけば、何とかなるかもしれないわね。それに予備も幾らか必要になるけど・・・」
「はい、資材は大丈夫でしょうか?」
「安心なさい。向こうの世界とちょっと交渉してくるわ」
房子は立ち去った。
(あの世界にいい案があるというのだろうか・・・?」
義昭は房子がどうするのか自分には知る由もなかった。
房子は異世界の人間と話す。
「レーニン様」
「重信房子か。何か用か?」
「はい、私の部下にこの機械を作らせているのですが、この機械を強化して頂きたいのです」
「何を言っている。また注文するのか。貴様ら剣を手にしてから他の道具の奪取には失敗を重ねているではないか。一体何度私を失望させてくれた?何でも頼みを聞いてこちらも『はい、分かりました』で済む訳にはいかん」
「申し訳ございません。それは我々の実力不足と相手の妨害によるもので・・・」
「そんな言い訳はもう聞き飽きた」
「はい、ですが、東アジア反日武装戦線という組織と同盟を結ぶことができましたので、我々に勝利が傾くのです。それにこの機械は敵を察知でき、攻撃も防御も強化され、更には気合だけで相手を戦闘不能に追い込むことができる機械なのです。この機械をレーニン様の世界でも実用できます」
「それを使えば、杖も、杯も、護符も、手にする事が可能なのだな?」
「はい。ただ、一つ問題は平和を正義とする世界のある人物の能力によって簡単に壊されるという事です。それを解決する事ができればいいのですが・・・」
「平和を正義とする世界か・・・」
レーニンは考えた。平和を司る世界。それは生前、平和の為に尽くした二人が治める世界。その二人の能力は恐ろしい。あの二人さえ封じる事ができればとレーニンは考えていた。
「分かった。考えてやろう。だが、今度こそ残りの三つの道具を手にするのだ」
「はい」
房子は機械をレーニンに渡した。
平和を司る世界の本部。フローレンスはその場でただ黙然としていた。
「フローレンス、悩み事かね?」
イマヌエルが現れた。
「はい、戦争を司る世界との戦いも、日本赤軍のテロも、片付けなければなりません事が色々ありますのです。その為に前世の方に人々を派遣させ、平和を守リます為に道具を持たせましたのですが・・・」
「確かに、相手に我らが世界の最上位の強さを持つ四つの道具が狙われる現状となっているね。そのうち、広島にある剣が奪われたし、杖や杯は何とか守り続けられている。だが、護符が名古屋の地に渡った時、相手はその護符を探しまくった結果、護符の在処まで知られてしまった。このままではこの世界自体も危ないし、折角各地に道具を授けた意味が薄れている」
「はい、こうなりましたら、危険な懸けにでますしかありませんね・・・。彼等を私達の世界に来て頂きまして、是非とも戦いに参加してもらいませんと・・・。そして、もう一つの課題としまして、剣の奪還も図りませんといけませんね」
「そうだな、赤軍と戦争の世界との干渉を断ち切る為にも、彼等の勢力の拡大を防ぐ為にもあの剣がこっちに戻ってくればいいのだが・・・」
フローレンスとイマヌエルにも解決必須かつ難関な課題にぶつかっている現実を顧みるのであった。
後書き
次回は・・・
「気の強き宮城女」
クリスマスの朝、かよ子は藤木が昨夜から行方が分からなくなっていると聞かされる。そして宮城県仙台市。そこには異世界の人間から不思議なマフラーを貰った気の強い女子高生がいた。そしてそのマフラーには九つの不思議な能力を宿していた・・・。
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