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歪んだ世界の中で

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第二話 二人のはじまりその二

                      第二話  二人のはじまり
 希望はだ。千春と共に。
 神戸の町を歩きだした。だが、だ。
 彼の顔は晴れない。彼女と共にいてもだ。その彼にだ。
 千春はあくまで明るくだ。こう声をかけてくるのだった。
「明るくていいから」
「明るくって」
「何か希望暗い」
「そうだろうね。自分でもわかってるよ」
 俯いてだ。その暗い顔で答えるのだった。
「そのことはね」
「何で暗いの?」
「本当に何もかもが楽しくないから」
 それでだというのだ。
「だからなんだ」
「楽しくないって?」
「家にいても学校にいても」
 失恋から罵倒や侮蔑、何よりも孤立。そうしたあらゆることによりだ。
 彼は苛まれていてだった。そうなっているのだった。
 だがこのことはとても言えずだ。その暗い顔で俯いてだ。
 そしてだ。千春にこう言うだけだった。
「だからね」
「居場所ないの?」
「うん、そうなんだ」
 それでだというのだ。
「何をしても何処にいても楽しくなくて」
「暗いの」
「そうだよ。笑うことなんてできないよ」
 今の彼にはだ。とてもだった。
 このことを話してだった。希望はだ。
 俯いたままでだ。千春に今度はこんなことを言った。
「だからさ。君がどうして僕と一緒にいたいのかわからないけれど」
「千春が?」
「何にもならないよ」
 彼が言った。その樹里に対して。
「そんなことをしてもね。だから」
「希望と別れろっていうの?」
「本当に何にもならないよ。むしろ誰に何言われるかわからないから」
「他の人のことは気にしないから」
 希望の暗い顔での警告にだ。千春はだ。
 あっけらかんとさえした笑顔で応えた。そしてだった。
 あらためて彼に言うのだった。
「千春希望以外の人に何言われても大丈夫だから」
「だからいいんだ」
「そう、一緒にいたいの」
 明るい、希望とは対称的な顔での言葉だった。
「希望と一緒に。それじゃあ駄目?」
「どうしてもっていうんなら」
 実際のところ彼も孤独が辛かった。真人がいないのなら余計にだ。
 それに千春が可愛いのを見てだ。そして言うのだった。
「いいよ」
「有り難う、そう言ってくれるのならね」
「一緒にいてくれるね」
「うん、それじゃあ」
 こう話をしてだ。千春はだ。
 希望と共にいるのだった。そのうえでだ。彼に対してだ。何処に行こうか言ってきたのだ。その場所はというと。
「町に行く?」
「町?」
「千春山に住んでるけれどこの町にずっといるから」
 それでだというのだ。
「だからね」
「町のころよく知ってるんだ」
「そうなの。だから町の商店街に行こう」
 二人が今いるだ。町の外れからだというのだ。
「それでそこでね」
「遊ぶんだね」
「それでどう?」
 ここまで話してだ。あらためてだった。希望に尋ねてきたのだった。
「二人でね」
「それじゃあそこに。けれど」
「けれど?」
「僕、お金ないから」
 こう言うのだった。肝心のそれがないというのだ。 
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