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戦国異伝供書

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第百十七話 政宗の決意その二

「今宵は早くに休まれて下さい」
「そうしてじゃな」
「ゆっくりと飲まれて下さい」
「そうすることがいいな」
「今日は論功も終わりましたし」
 この大仕事が終わったからだというのだ。
「しこたま飲まれて下さい、ただ」
「明日からまたじゃな」
「政に励まれて下さる様」
「お主は言うな」
「左様であります」
「よくわかった、ではな」
「今宵は、ですな」 
 小次郎は兄に笑って話した。
「早く休まれますな」
「やるべきことは全てしたしな」
「それならばですな」
「飯を食ってじゃ」
 夕のそれをというのだ。
「その後はな」
「中に入られてですな」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「しこたま飲む」
「そうされますな」
「今宵はな」
 こう言ってだった、政宗は。
 実際にこの日は夕食は早いうちに食べて愛姫のところに向かった、そうして彼女の顔を見つつ酒を飲むのだった。
 その中でだ、彼は言った。
「久し振りにじゃ」
「こうして飲まれるとですか」
「美味い」
 こう言うのだった。
「そなたの顔を見て飲むことはな」
「それで、ですか」
「今宵はこうして楽しむ」
「出陣前と同じく」
「そうする、肴はな」
 それはというと。
「今宵は味噌じゃ」
「味噌ですか」
「これでよい、あと蕎麦がきでな」
「その二つですね」
「そうじゃ、しかしな」
「その肴よりもですか」
「そなたがじゃ」
 愛姫を見て言うのだった。
「最高の肴じゃ」
「またそう言われますか」
「真実であるからな、それでじゃが」
 政宗はさらに話した。
「母上のことであるが」
「何かありますじゃ」
「実はよい陶器が手に入った」
「茶器で、ですか」
「そして着物もな」
 これもというのだ。
「だからな」
「その茶器と着物をですか」
「母上に贈ろうと思うが」
「それはいいことです」
 愛姫は政宗に笑顔で答えた。
「では是非です」
「ではな」
「そうされて下さい」
「そしてお主にもな」
 愛姫にも言うのだった。
「そうしたいが」
「私にもですか」
「よい茶器と着物がな」
 その二つをというのだ。
「贈りたいが」
「私は特に」
 愛姫は自分のことには遠慮する顔で述べた。 
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