おぢばにおかえり
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第六十一話 食べてもらってその二十二
阿波野君はそちらもしてくれてしかもです。
「慣れてるわね」
「そうですか?」
「ええ、随分とね」
見てこう言いました。
「慣れてるわね」
「こういうのは昔からしてまして」
「お家でなの」
「はい、他の人のお家にお邪魔した時も」
「そこでもおみちの子ってことね」
「そこまで意識したことはないですが」
それでもというのです。
「ちゃんとしないと、とは思っています」
「それでお皿もなのね」
「洗って拭かせてもらってます、あと」
阿波野君はこうも言いました。
「人にさせて自分は何もしないって嫌いですから」
「そうした人いるわよね」
「そんなのおみちの人失格ですから」
だからだというのです。
「僕は絶対にそうしたことはしたくないです」
「そこはいいところよ」
「そうですよね、やっぱり」
「だからいさんでいってね」
「さっきお話した親戚とかその母親がそんな人間で」
「反面教師にしてるの?」
「ああはなるまいって」
「そうなのね、反面教師ね」
そう聞いて私は阿波野君に手を動かしながら言いました。
「そこから学ぶこともいいかも知れないけれど」
「それでもですか」
「それよりもね」
「いいことがあるんですか」
「ひながたって言葉あるでしょ」
おみちにはあります。
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