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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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妖精たちのクリスマス

 
前書き
ようやくクリスマスの投稿です。
忙しすぎてギリギリでした。 

 
ウェンディside

「「「「♪♪♪♪」」」」

鼻歌混じりでカルディア大聖堂の床をブラシで擦っているルーシィさんとジュビアさん。その二人を背に、私とシャルルも鼻歌を歌っています。

「うおおおおおおお!!」

その私たちの目の前ではゆっくりと立ち上がっていく大木。それを一人で押しているエルフマンさんの声が周囲に響き渡ります。
そしてその木が立ち上がると、周囲から一斉に街の人たちの歓声が沸き上がりました。

「よし」
「わーい!!おっきなクリスマスツリー!!」

無事に立ち上がったそれを見てうなずくアルザックさんと大喜びのアスカちゃん。そう!!今日はクリスマスイヴ!!今からエルフマンさんが立ち上げた木をクリスマスツリーとして飾り付けをしていくんです。

「なんだかウキウキするね!」
「そりゃあクリスマスイヴだもの」

梯子を使って飾りつけをする私も、(エーラ)を使って飾りを持っているシャルルもなんだかウキウキしています。すると、その後ろをエルザさんがロープを使って降りていくのが目に入りました。

「ツリーは頼んだぞ!!」
「エルザさん!!それ、とっても似合ってます!!」
「そうか?」

胸元が大きく開いたミニスカートのサンタコスチュームに身を包んだエルザさん。それを私が誉めると、彼女も満更ではない様子です。

「はりきってるわね」
「そりゃあクリスマスイヴだもん」

みんな大好きなクリスマス。エルザさんも例外ではなかったようで、私たちは自然を笑みが溢れました。













シリルside

「おいお前!!どこ掃除してんだよ!!ほこり全然落ちてねぇぞ!!」
「あぁ!?そっちはさっきテメェがやったんだろうよ」
「二人ともやめてくださいよ」
「うるせぇな。黙って拭きやがれ」

スポンジを片手に睨み合っているナツさんとグレイさん。一触即発の雰囲気を制しようとすると、ガジルさんもイライラした声だけど、同調してくれました。

「見てろよぉ」

俺たちが掃除しているのはガルディア大聖堂の大きな鐘。ナツさんはそれに息を吹き掛けると、なぜかスポンジを持っていない方の手で何かを書き始めました。

「見てろじゃねぇテメェ。何やってんだ」
「どうだ!!」
「どうだじゃねぇ!!ちゃんと拭け!!」

ハッピーの絵を描いて満足げなナツさんだけど、グレイさんは当然怒り心頭です。

「だからやめてくださいって」
「だからやかましいって言ってんだ」
「そうだよ、ちゃんとやろうよ・・・何の話?」
「聞いてなかったの~?」

日頃お世話になっているマグノリアの街への感謝の気持ちを込めて、今日はギルド総出で掃除や街の飾りつけを行っている。

「なんで俺たちこのグループなんだろ・・・」

ツリーに飾りつけをしているウェンディたちの様子が目に入ってしまい、ちょっと切なくなる。俺たちも本当は向こうのはずだったんだけど、鐘の掃除のメンバーがあまりにも不安だからとマスターに押し込められてしまったのだ。

「ナツ!!グレイ!!」
「「は!!はい!!」」

なおもケンカを続ける二人をどうしようかと思っていると、下から怒声が聞こえ、二人ともそちらを振り向く。

「掃除中にケンカなどするな!!しっかりやらんか!!」
「よーしグレイ!!ピカピカにすんぞ!!」
「おうよ!!」

エルザさんには反抗できない彼らはすぐさま真面目に掃除へと戻ってくる。最初からエルザさんをここに入れてくれていた方が確実だったのではないかと思っているのは内緒です。

「これで落ち着いて掃除できるね」
「そうだね~」

二人が真面目に掃除をやり始めたので安堵したのもつかの間・・・下からまたエルザさんがこちらに声をかけてくる。

「リリー!!セシリー!!鐘はそいつらに任せて、外窓に回ってくれ」
「わかった」
「えぇ!?」

彼女の非道の宣告に思わずセシリーを見つめる。彼女はこれを聞いてニヤリと笑っていた。

「わかった~!!バイバイシリル~」
「あぁ!!そんな・・・」

よりによって真面目に掃除をやってくれそうな二人を連れていかれてしまい、開いた口がふさがらない。

「文句言ってんじゃねぇ!!」
「文句なんて言ってねぇだろ!!」
「言ってんだろ!!」

エルザさんの姿が見えなくなったからか、再び言い争うを始める二人。せっかくなら俺も外窓に回してくれたらよかったのに。

「あれ?ハッピーどこ行きました?」
「青猫なら外窓に行ったぞ」
「えぇ!?ハッピーまで!?」

いつの間にか姿が見えなくなっていたハッピー。意外にも真面目に掃除しているガジルさんからそんなことを言われて、ますますここから離れたい気持ちが強くなっていきます。

「ん?おいナツ!!ここまだ拭いてねぇぞ!!」
「あ?そこお前のそこだろ!!」
「さっきまでお前、ここでやってただろ!!」
「テメェは服着ろ服!!」
「このクソ暑いのに着れるか!!お前こそ暑苦しいぞさっさと脱げ」
「脱ぐか!!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の良心とも言えるエクシードたちが全員いなくなってしまったため、どんどんヒートアップしていく二人。それにガジルさんも入っていこうとするので、ますます手に追えない。

「もう!!皆さん!!ちゃんとやってくださいってば!!」

普段あまりやらない作業に身が入っていなかったのもあるんだけど、ちょっとイライラしてきてたので思わず声を張り上げてしまった。すると、三人は意外だったのが目を見開き硬直してしまっていた。

「あ・・・ごめんなさい・・・」
「いや・・・」
「俺らこそ悪ぃ・・・」

ただ、それがよかったのか三人も争うのをやめてくれて、静かに作業に入っていく。珍しく声を上げた俺は恥ずかしさと気まずさでなんとも言えないけど、何事もなかったかのように作業へと戻っていった。

















「ナツゥ!!」
「シリル~!!」

日が暮れて辺りが暗くなり始めた頃、ようやく皆さんも掃除が落ち着いてきたのか、ハッピーとセシリーがこちらへと戻ってきた。

「うわぁ!!ずいぶんキレイになったね!!」
「おう!!あと少しでピッカピカだな!!」
「さんざん大騒ぎしてましたけどね・・・」
「全部聞こえてたよ~」

そう言って大笑いするナツさん。ただ、彼とグレイさんが度々言い争うをしていたせいでこんなに遅くなってしまったので、少しは反省してほしい気もする。

「あとどのくらいで終わるの~?」
「もう本当に少しで終わるよ」

まもなく夜になるため、本格的にクリスマス気分に突入していきたいセシリーが急かして来るけど、気にせず掃除を続ける。すると、何やら今いる場所が揺れたような気がした。

「あれ?なんか今揺れませんでした?」
「あぁ?そうか?」

隣にいるガジルさんに顔を向けるが、彼はこちらを見向きもせずに作業に集中している様子。ナツさんも俺と同様に違和感を覚えていたが、グレイさんにあっさり否定されていた。しかし・・・

「おい!!やっぱり揺れてんぞ!?」
「そうですよね!?揺れてますよね!?」
「風じゃねぇか?」
「黙って掃除しろ」

確実に全員が感じられる揺れに戸惑っているナツさんと俺。しかし、グレイさんたちは全然気にしていない。

「ってオメェか!?グレイ揺らすな!!」
「はぁ!?誰が・・・」

再び言い争うを始めた二人だったが、すぐに異変が襲ってきた。それは・・・

「うぷっ・・・」

ナツさんの顔が真っ青になったこと。

「あぁ!!ナツ吐くな!!せっかくキレイにしたんだぞ!?やめろぉ!!」

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)特有の乗り物酔い。ナツさんはそれに特に反応しやすいため、この鐘のわずかな揺れで吐きそうになってしまったのだ。それを慌てて上段部分を掃除していたグレイさんが食い止めようと彼の口を塞ぐが・・・

「「「「うわああああああ!!」」」」

ゴーン

それによりますます揺れが激しくなってしまい、盛大に鐘の音が鳴り響いてしまった。

「ちょっと!!」
「何をしている!?」
「揺らしすぎよ!!」

その音を聞いて集まってくるギルドの人たち。その間も鐘は鳴り響き続けており、近くにいる俺たちはますますダメージを受けていく。

「ガジルさん助けてぇ!?」
「何とかしろ!!」
「あぁ!?何をどうしろってどああ!!」

この揺れでは俺たちではどうすることもできないと、唯一冷静そうだったガジルさんに助けを求めるが、彼は鐘の揺れに体を打ち付けられており、肉体的ダメージは一番追わされているようだった。

「お前たち、何をした?」

かなりのお怒りモードで現れたエルザさんだったが、一足遅かった。あまりにも大きく揺れすぎた鐘は建物との接着部分が切れてしまい・・・

「「「あ」」」
「「「「うわあああああ!!」」」」

教会へと落ちてしまった。

ゴーン

最後まで甲高い音を響かせながら教会の中央へと落ちた鐘。頑丈であろうそれもさすがに耐えきれなかったのか、見るも無惨な姿になってしまった。

「このバカ共が!!」
「「「す・・・すみません・・・」

鐘が揺れた原因は、ハッピーがイタズラをしていたらしく、そして大騒ぎしていたグレイさんとナツさんも一緒に正座をさせられていた。

「あちゃあ・・・」
「あらあら」
「いつかこうなると思ってたわ」
「だよね~」

最初から不安だらけだったこともあり、女性陣は呆れた様子でその様子を眺めている。

「いいぞぉ!!もっとやれぇ!!」
「な・・・なんてことしてくれたんじゃ!!また請求書が・・・」

酔っぱらっていたカナさんはそれを笑っていたが、一緒に飲んでいたマスターは酔いも覚めたようで、真っ青になりながら気絶してしまった。

「どうしよう・・・イブの夜はこの鐘を鳴らさなきゃいけないのに・・・」
「さっき鳴らしちゃったけどね」
「そんな笑顔で言わないでくださいよ」

深刻な事態なのにあくまで笑顔を絶やさないミラさんに思わず突っ込んでしまう。

「何をしている!!とっとと直さんか!!」
「「「は!!はい!!」」」
「手分けするぞ。なんとしても間に合わせる」

夜まで時間がないため、全員で協力して鐘を直すことになった。全員の魔法を惜しみ無く使い、鐘の修復から教会の床の修繕、そして鐘の取り付けまでを猛スピードで行っていく。その結果、なんとか元通りに復元することができた。

「はぁ。どうなることかと思ったけど」
「何とか間に合ったね」
「はい。元に戻りました」

終わるとは思ってなかっただけに一安心。この事態を引き起こした三人も得意気だったけど、エルザさんに怒られてしょんぼりと肩を落としていた。

「よーし!!みんなお疲れ!!解散!!」

マスターの号令で各々散っていく皆さん。俺とウェンディはナツさんたちと一緒にクリスマスパーティをすることになっているため、彼らと一緒に目的地へと歩いていく。

「しゃあ!!みんなパーティだ!!燃えてきたぞ!!」
「「「「「おお!!」」」」」
「やったぁ!!クリスマスパーティ!!」
「早くみんなで盛り上がろう!!」
「あんたはなんだかんだ言って、毎日盛り上がってるじゃない」

よほど楽しみだったのだろう、ハイテンションの皆さんがますますテンションが高くなっている。ただ、そんな中一人の様子が明らかにおかしい。

「エルザ!?どうしたの!?」

ルーシィさんの方で呼ばれた彼女の方を振り向く。エルザさんはなぜか体を震わせており、俺とウェンディは何があったのかと顔を見合わせていた。

「つ・・・ついに来た・・・この時が・・・」
「え?」
「メリークリスマス!!」
「「「「「メリークリスマス!!」」」」」
「メリー・・・って!!なんであたしんち!?」

どうやらエルザさんは相当クリスマスパーティが楽しみだったらしく、早くパーティをしたくて震えていたらしい。とはいう俺たちも全員同じだったため、クリスマスパーティを行うルーシィさんの家に突撃していたのだった。

「いいじゃねぇか」
「落ち着くんだよな」
「あい!!」
「素敵なお部屋ですね」
「キレイに整頓されてるね~」
「ちょっと狭いけどね」
「これだけ人が集まれば・・・ね?」
「一人暮らしな訳だしね」
「おい。そのティーカップ食わせろ」
「これ、鉄じゃないよ」
「鉄はこっちだ」

部屋の持ち主であるルーシィさんに確認はとってなかったけど、なんやかんや彼女は優しいので使わせてくれるのはわかっている。そのため、皆さんも遠慮なく好き勝手騒いでいるのだ。

「ほれ!!さぁ飲め!!これぞ青春だ!!」

中でも一番盛り上がっているのはエルザさんだ。意外と子供っぽいところもある彼女は、こういう時に一番素が出やすい人なのかもしれない。

「なんでもいいじゃねぇか!!」
「盛り上がっていこうぜ!!」
「もう!!わかったわよ!!」

そう言ってエルザさんに注がれたお酒を飲み干すルーシィさん。俺たちも同じようにおしゃべりしながら盛り上がっていると、俺はウェンディが飲んでいるものに気がついた。

「あれ?ウェンディそれ・・・」
「え?どうしたの?シリル」

隣にいる彼女が飲んでいるものが、俺が飲んでいるジュースと明らかに色が違う。そう・・・すぐ目の前にいるジュビアさんとエルザさんと同じものを飲んでいるような気がする。

「・・・」
「どうした?シリル」
「具合悪いのか?」

顔色が悪くなっているであろうナツさんとグレイさんの声が聞こえてくる。二人は気づいていないのだろうか、今の状況が以前にもあったことに。

(この人たちがお酒を飲んだら大変なことになっちゃうじゃん!!)

大魔闘演武に向けての合宿で泥酔した彼女たちの荒ぶりようは半端じゃなかった。あの時の悪夢が蘇り、コップを持つ手が震える。

「あ・・・」

どうすればいいのか悩んでいると、俺はある結論に至った。

「ナツさん、グレイさん」
「どうした?シリル」
「あとお願いしますね」
「「??」」

俺の言葉に顔を見合わせる二人。俺は意味がわかっていない二人を横目に、ウェンディたちと同じ飲み物に手を伸ばす。暴走した彼女たちを止める術がないなら、俺も酔っちゃえばいいんだ。そうすればいいんだ。
















グレイside

「「「・・・」」」

大盛り上がりだったはずのクリスマスパーティ。だが、今俺たちは顔を真っ青にしている。

「またやっちまったー!!」
「酒が足りんぞ!!」
「切ない・・・冬って切ないです」
「レビィちゃんおんぶー」
「あはははは」
「あんたはロバよ!!いい!!ロバなのよ!!」
「あい」

目の前に広がる絶望的な光景。酒に酔ったエルザたちが合宿の時のように我を忘れてしまっているのだ。

「シリル~、可愛いよぉ」
「ウェンディの方が可愛いよぉ」

さらに言えばあの時よりも状況が悪化している。合宿の時は俺たち側にいたはずのシリルが酔い潰れてウェンディとキスしまくっている。見てる分には女の子同士のイチャイチャしている姿なのだが、あいつも向こう側に行ってしまうと非常にたちが悪い。

「どうなってんだこりゃー!?」
「グレイ!!逃げるぞ!!」
「おう!!」

何が起きているのかわかっていないガジルには悪いが、俺とナツはここから立ち去ろうと走る。しかし・・・

「どこ行くつもりかー!?」

エルザの手から投じられた剣が扉へと突き刺さり、硬直してしまう。

「「酒をつげーい!!それができないなら・・・酒をつげ」
「同じこと二回言ってる!!くふ・・・あはははは!!」
「グレイ様はジュビアをおいて帰っちゃうんですか?」
「ねぇ、もっと遊ぼうよ。ねぇねぇ」
「お星様がチカチカするよ~」
「あんたたちはトナカイなのよ!!」
「あい」
「イヤ・・・俺は違うぞ」

振り返るとどんどん状況が悪化していることに気が付く。しかし、それでもなんとか逃げようと画策していると・・・

「ナーツさん」
「グレイさん」

俺とナツの抱き付いてくる二つの影。それは先程から二人で一目も憚らずキスをし続けていた幼子コンビ。

「ウェンディ!?」
「シリル!!正気を取り戻せ」

無駄だとわかっていても抵抗はしておくもの。だが、この二人の酔い方は俺たちの想像を遥かに越えていた。

チュッ

「「!?」」

ナツに抱き付いていたウェンディ、俺に抱き付いているシリルがそれぞれの頬にその唇を押し付けてくる。その行動に頭が付いていかない俺たちは目を見開いた。

「これでも私たちを置いて・・・」
「帰っちゃうんですか?」

二人の上目遣いに頬を赤くして困惑していると、その間にも俺たちはどんどんピンチに陥ってしまっていた。

「グレイ様がシリル()のキスにそんなに喜ぶなんて・・・」
「喜んでねぇよ!!」
「ナツ~、ウェンディとシリルだけじゃなくてあたしにも構って~」
「お前そんな声出さねぇだろ!?」

涙を流しながらすり寄ってくるジュビアと同じくナツにすり寄るルーシィ。引き離されたシリルとウェンディはというと・・・

「ウェンディ~」
「きゃあ!!もうシリルったら~」

酔っ払いすぎてキス魔になってしまったシリルが彼女の首筋やらあらゆるところにキスをしており、ウェンディも満更ではない様子。

「グレイ様!!雪が・・・雪が降っているんです」
「それがどうしたんだよ」
「もう・・・ただ悲しくて・・・」
「知るかあ!!」

酔うと泣き上戸になってしまうジュビアに拘束され身動きが取れねぇ。ガジルもレビィに捕まり、ナツもルーシィに捕まっており助けてくれる者など誰もいない。そう思っていると・・・

「えぇい!!どいつもこいつもイチャコラしおって!!そんな青春若人にはこれだ!!ギルドマスターゲーム!!」

コップに割り箸を人数分差したものを掲げるエルザ。

「わぁ、楽しそう!!」
「あはははは」
「なんだそりゃ!!」

相変わらずのルーシィたちはさておき、ナツは何が起ころうとしているのか焦り始めている。しかし、俺はそれ以上に汗が止まらなかった。なぜならそのゲームを耳にしたことがあったのだから。

「おい・・聞いたことあるぞ・・・そりゃ悪魔のゲームだ」
「この棒にはそれぞれ番号がついている。そして一本だけマスターの印があるのだ。みんなで順番に引きマスターになったものは《5番が8番を叩く》といった命令を出せる。そしてその命令は絶対だ」
「「「・・・」」」

明らかに何かを仕掛けようとしているエルザの顔に俺たち三人は青ざめていた。しかし、ジュビアたちは全くそんなことなど気にする素振りもなく、すぐにゲームが始まってしまう。

「「「「「マスターだ~れだ!?」」」」」
「私だ!!私がマスターだ!!」
「仕込んであるんじゃねぇか?」
「バカ・・余計なこと言うな」

棒を高らかに掲げるエルザ。ナツはそれに不服そうだが今のあいつを刺激するのは得策じゃない。ここは静かに何もしないのが一番賢い。そう思っていた時期が、俺にもありました。

「7番は全裸になれ!!」
「が・・・」
「いきなりキツイのキター!!」

エルザの命令により全裸にされるガジル。その光景を見た途端、一気に顔色が変わる女たち。

「た・・・たの・・・し・・・」
「か・・・かな・・・し・・・」
「あ・・・あは・・・は・・・」
「「・・・」」
「酔いが覚めやがったな」

我を忘れていたルーシィたちは一糸纏わぬ仲間の姿に正気を取り戻した。シリルとウェンディに至っては抱き合ったまま顔面蒼白で、身動きひとつ取れないでいる。

「さぁ次だ!!ガジル!!次はマスターだといいなぁ」
「やめよーよエルザ!!」
「こ・・・これすごく危険です!!」
「ど・・・どうしよう・・・」
「「・・・」」

懸命にエルザを止めようとするが今となっては後の祭り。彼女の暴走を止めれるものなどいるわけもなく、すぐさま次のゲームに入る。

「マスターだ~れだ!?」
「あたし!!」

最悪の状況(エルザにくじがわたる)だけは回避した俺たちは安堵の表情。しかし、そう簡単に物事は進まない。

「じゃあ1番と5番が握手!!」
「ぬるいわあ!!」

ルーシィの優しい命令に安心しかけたがすぐに横槍を入れてくるエルザ。その圧に押されながらルーシィも反論する。

「だって・・・マスターの命令は絶対でしょ?」
「お前はこのゲームの趣旨がわかっていないぞ!!若い男女が恥じらいと期待をするような命令をするのが醍醐味なんだ」
「それが全裸かよ」
「思考が子供のそれですよ、エルザさん」

ガジルとシリルの冷静な突っ込みをスルーしルーシィの胸を両手で挟むエルザ。

「先代マスター特権により命令を変更!!1番と5番は現マスターの胸を揉んでよし!!」
「イヤよ!!」

危機を回避したはずなのにとんでもない命令へと巻き込まれるルーシィ。ただ、今回の対象はレビィとジュビアだったため、我慢して耐え凌ぐことになっていた。

「やったー!!オイラがマスターだ!!」
「ハッピ~」
「ヒドイのはやめてね」
「ハッピーには猫Verの方が効果あるぞ」

次のマスターになったハッピーに上目遣いするセシリーとシャルル。リリーの突っ込みももっともだが、ここはそんなこと置いておこう。

「3番が10番のお尻を叩く」
「ウム。いいぞ、ハッピー」

ハッピーの命令に満足げなエルザ。だが、全裸のガジルの尻をナツが叩くという絵面に全員引き気味になっている。

「2番と6番は1分間見つめあってください!!」
「軽くて助かったぜ」
「そうね」
「レビィさんまで恋敵に・・・」

次のウェンディの命令は俺とレビィ。まだ緩くて助かったが、暴れているジュビアをシリルとウェンディが抑えている姿が目に入り気まずい雰囲気。

「8番と9番は一分間抱き合う」
「ふぅ」
「これくらいなら・・・ね」
「なんでグレイ様ばっかり!!」

次のレビィは少し意地悪な笑みを浮かべてはいたが、これまた緩めの命令に安堵しつつ、ルーシィを抱き締める。なんかさっきから俺ばかり当たるが、まだ緩いだけマシだろう。

「4番と5番が・・・」

続いてマスターになったシャルルが命令をしようとすると、先程からの命令で不機嫌になってきているエルザの圧を感じたようで、一瞬奥歯を噛んだのが誰の目からもわかった。

「よ・・・4番が5番のお腹にキス」
「うむ。よかろう」
「ぐっ・・・」

さっきよりもインパクトのある命令ではあるが、まだ許容範囲内。ただ、また俺が選ばれたことにはどうしても納得できないが。

「で・・・5番は誰・・・」

4番の俺が相手の人物を確認しようとすると、そこには細くて真っ白な細いお腹を出して顔を真っ赤にしている水色の髪をした人物がいた。

「ぐ・・・グレイさん早くしてください」

泣きそうな表情でくびれすら確認できるウエストを見せているシリルを見て頭が付いていかなくなるが、懸命に平静を保ちながら、かの・・・彼のお腹へとキスをする。

「ん・・・」
「「「「「グレイ(さん・様)!!」」」」」
「俺のせいじゃねぇだろ!!」

キスされた瞬間のシリルの色っぽい声に全員が俺を責め立てるが、俺に一切非はない。こんなゲームを始めたエルザが悪いに決まってるだろうが。

「6番が~」チラッ

続くセシリーもエルザの圧を感じつつ、彼女を満足させるための命令を考える。もう頼むから俺の番号は指名しないでくれ。

「7番の胸を揉む~!!」















ジュビアside

力強く言いきったセシリー。その命令は少しずつあれなものになってきていますが、今のジュビアはそれどころではありません。

(ジュビアが7番。そしてこの流れは・・・)

さっきからずっとグレイ様が指名される流れができている。これはつまり、今回もグレイ様が指名されているはずです!!

「グレイ様!!ジュビアが7番です!!さぁ!!ジュビアの胸を揉んでください!!」

奥手なグレイ様が自分からジュビアを求めてくれるなんてこれ以上ない幸せ。そう思っていたのに、彼が持っている番号は指定されたものではありませんでした。

「じゃあ一体誰が・・・」

誰が6番を引いたのかと見回すと、申し訳なさそうに顔を俯けて、番号の書かれたものを出しているシリルがいました。

「授乳というわけですね、わかります」
「あの・・・何言ってるのか全然わからないんですけど・・・」

チラチラとウェンディに視線を向けているシリルは、彼女から放たれているどす黒いオーラに押されているのでしょう。ですが、命令なので仕方ありません。そもそもシリル(むすめ)なのだから、問題なんてないんです。

「おいで、シリル」
「うぅ・・・なんかすみません、グレイさん」
「だから俺が何をしたって言うんだよ!!」

両手を広げて顔を伏せたままの(シリル)を迎え入れる。シリルは顔を真っ赤にしながらジュビアの胸に飛び込み、恥ずかしそうにその手を伸ばしている。
















シリルside

ムニュッ

「!!」

セシリーのせいであとでグレイさんにもウェンディにも何か言われそうな命令を受けてしまった俺は、なぜか乗り気のジュビアさんに体を寄せ、指定された部位に手を伸ばす。すると、その部位のあまりの柔らかさにビックリして、ついつい真顔になってしまった。

「これはあとで怒られるわね」
「僕のせいじゃないよね~?ね~?」

後ろで猫たちが何か言ってるけどそんなことが気にならないくらいジュビアさんの大きなそれの魅力に取り込まれている。すると、制限時間に達していたのかシャルルたちから引き剥がされてしまい、なんだか寂しい気持ちになってしまう。

「シリル、あとで覚えておいてね」
「はっ!!」

残念がっていると、隣の少女から禍々しいほどのプレッシャーが放たれていることに気が付き、顔面蒼白。冷や汗が止まらなくなる。

「あの・・・ウェンディさん?」
「ふん」

そっぽを向いて明らかに機嫌が悪い彼女に言い訳をしようとするが、ノリノリのエルザさんがすぐさまゲームを進行してしまい・・・

「マスターキター!!」
「「「「最悪だあ!!」」」」

一番起きてはならない事態になってしまった。

「ぬるい命令ばかり出しおって!!私は甘くないぞ!!
5番は裸で踊れ!!」

最悪のマスターの命令により全裸で踊らされるナツさん。女性陣は目のやり場に困っているが、エルザさんは不服の様子。

「女子を脱がさねば面白味がないというのに・・・」
「一応嫁入り前の女子なんですけど」

ちょっと見てみたい気持ちと自分に降りかかりそうな恐怖で気持ちの整理が追い付かない。そんなことをしている間にも・・・

「またマスターキター!!」
「ニ連続だと!?」
「暴君!!」

彼女にマスターの権利が渡ってしまう。

「お願いですエルザさん・・・」
「全裸だけはやめてください・・・」

もう彼女を止めないと大変なことになると察した俺とウェンディはすがるような目で彼女に訴える。

「む・・・そうか。シリルとウェンディにそこまで言われると躊躇するな」

それを聞いてこの地獄絵図から抜け出せたかと思ったのもつかの間。

「だが断る!!」
「「えぇぇぇ!?」」

彼女はすぐにその希望を打ち砕いてくる。

「1番は全裸で四つん這いになり愛するものの名を叫べ!!」
「ウル師匠!!」
「失恋・・・」
「これ・・・自分だったらと思うとゾッとする・・・」

いつもとあまり変わり映えのしないグレイさんの姿になんとも言えない気持ちだけど、エルザさんにより支配ゲームはどんどん加速してしまう。

「4番と7番はメイドのコスプレで犬の真似をしろ」
「「わんわん!!」」
「遠吠え!!」
「「わおーん!!」」

ウェンディとシャルルのメイド姿の犬の物真似。てか二人とも尻尾まで付けてノリノリじゃねぇかよ!!

「3番と7番はバニーガールで一曲踊れ」
「どうせこんなことだろうと思ったよ・・・」
「大体僕がセットになるよね~・・・」

次の指名は予測できたかな、俺とセシリー。ルーシィさんがよく着させられていそうなバニーガールの姿でエルザさん選曲の一曲を踊らされる。みんなに見られるのも恥ずかしいし、中でもウェンディがずっとこちらを瞬くひとつせず見ている姿に顔から湯気が出そうになる。

「6番は水着で買い物行ってこい」
「寒い・・・」

今度はジュビアさんがこの雪降る寒空の中、水着姿で外へと追い出されてしまう。彼女は恥ずかしさと言うよりも寒さに震えながら、何かを買いに行かされていた。

「4番はパンツを脱いで窓から捨てろ」
「うぅ・・・」
「あ・・・ああ・・・」

泣きながら窓を開けて指定された通りの行動をするレビィさん。その姿をガジルさんが顔を真っ赤にして凝視しているので目を塞ぐべきなのかとも思ったけど、逆にウェンディから目を塞がれたので身動きが取れませんでした。

「6番と10番はき・・・キスをしろ」

お次はハッピーとリリーのBLキス。しかし、ここまで過激な命令をしておいて何を今更キスを言うのに恥ずかしがっているのかと彼女の思考が気になってしまった。

「3番は背中に蝋を垂らされ《気持ちいいです》と言え」
「熱っ・・・き・・・気持ちいいです・・・」

ついに唯一生き残っていたルーシィさんも彼女の毒牙に苛まれていた。これで全員彼女からの辱しめを受けたことになるのでゲームも終わり・・・と思っていた俺が甘かった。

「すみませ~ん・・・」
「使いかけのろうそく・・・」
「買ってくださ~い」

ボーンテージ衣装?に身を包んだ俺とシャルルとルーシィさんは街中へと追い出され使い古しのろうそくを販売させられる。普通なら手を出すはずかないのに、妙に男性客が多く購入していたのは絶対に優しさではないような気がしてならない。

「「「「にゃあ!!にゃあ!!」」」」

今度はウェンディ、ジュビアさん、レビィさん、セシリーが猫耳を付けて街へと放り出されていた。今度はひたすら猫の物真似をしているようで、さっきと違いゴールが見えない・・・これはキツそう・・・

ちなみにこの間になぜかグレイさん、ナツさん、ガジルさんは三人でお風呂に一緒に入らされていたらしく、大の男三人がひとつの浴槽はやはり小さかったようで、疲労困憊の表情で戻ってきていた。

「さぁ!!続きをやるぞ!!」
「なんでエルザばっかマスターになるんだ・・・」

全員ボロボロの状況にも関わらず未だ無傷のエルザさんはなおもゲームを続けようとしている。こうなったら誰かが王様になってこのゲームを終わらせるしかない!!

「「「「「マスターだ~れだ!!」」」」」

最後のゲームになることを祈りながら引いたクジ。その中に高々とそれを掲げる男性の姿。

「キター!!」
「「「「「救世主!!」」」」」

ついにエルザさんからマスターの座を勝ち取ったグレイさん。連勝記録が途切れた彼女は舌打ちしていたが、これでようやくゲームが終われる。そう思っていると・・・

「8番は全裸のまま家に帰れ!!」
「「「エグい!!」」」

グレイさんはとんでもないことを言い出した。

「グレイさん何してるの?」
「まだゲーム続ける気なの?」

エルザさんの毒牙により彼まで覚醒したのかとウェンディと怯えていると、突然その彼女が服を脱ぎ始める。

「おい!!何してるんだエルザ!!」
「や・・・やめ・・・」

なんとグレイさんはエルザさんの暴走を止めるためにわざわざ無理難題を彼女に押し付け酔いを冷まさせようとしたらしい。しかし、結果は彼女の暴走が止まることなく、どんどん服を脱いでいく。

「シリル見ちゃダメ!!」
「あぅ!!」

そして安定かな、ウェンディがビンタよりも強いんじゃないかと思われるほどの勢いで目を覆ってくる。最近思ったけど、この衝撃で失明とかしないよね?大丈夫だよね?

「楽しいパーティだった!!」
「よせエルザ!!冗談だ!!俺が悪かった!!」

本当に一糸纏わぬ体で帰ろうとドアノブへと手を伸ばすエルザさん。これはまずいと察したグレイさんが大急ぎで止めに入るが、素手で彼女に叶うはずもなく凪払われる。

「きゃっ!!」
「うわっ!!」

さらに彼女は止めようとした他の皆さんもなぎ倒してしまいカオスの状況だったパーティをさらに混沌へと叩き落としていく。その結果俺たちは先程までの疲労も相まって、意識を失ってしまった。















「う~ん・・・」

目を擦りながら体を起こす。寝惚けた目で周りを見渡すと、なぜか皆さんほぼ裸の状態で意識を失っており、何があったのかを懸命に思い出そうと首を捻る。
そしてここまでの経緯を思い出した俺はこんな事態を引き起こした張本人がいないことを確認する。

「本当にあのまま帰ったんだ・・・」

なんでもありな人だと言うのはわかっていたけど、最後までそれを貫き通していたことに驚きを隠せない。

「あれ?シリル?」
「おはよう?ウェンディ」

しばらくするとウェンディも目を覚ましたようで目を擦りながら視線をこちらへと向ける。皆さんも起こそうかと思ったけど、あれだけの騒ぎのせいで疲れているだろうし、起こすのもなんだか気が引ける。

「・・・帰ろうか?」
「・・・そうだね」

このままここにいても仕方ないのでシャルルとセシリーの尻尾を掴み、猫の姿へと戻してから二人を抱えて外へと出る。時刻はちょうど12時になるぐらいだったこともあり、辺りは暗く、雪が降り続いていた。

「うぅ・・・寒い・・・」

寝起きなこともあり寒そうに手に吐息をかけるウェンディ。それを見て、彼女の手に自分の手を伸ばし、握り締める。

「家まで手、繋いで帰ろ」
「うん!!」

セシリーとシャルルを抱える手とは逆の手をそれぞれ握り、指を絡ませる。その後しばらくは恥ずかしさが勝っていたからか無言だったが、ようやく口を開く。

「なんだかすごいクリスマスだったよね」
「色んな意味で忘れられないものになったよね」

エルザさんの暴走のせいできっと忘れることはないであろうクリスマスになった。ただ、さっきまでのはクリスマスイヴのパーティだった。つまり・・・

「ねぇ、ウェンディ」
「何?シリル」
「今日もしよかったら・・・うち来ない?」

そう言った瞬間、自分の言い方がなんだか変な気がして顔が赤くなったのを感じた。

「別に変な意味じゃないよ!!ただ一緒にクリスマスの夜でも過ごそうかなぁっと思っただけで・・・」
「うん。わかってるよ」

必死な俺の姿を見てクスクスと笑っているウェンディ。それに俺も合わせて笑ってみるが、きっとひきつっているに違いない。

「明日の朝まで二人きりで楽しもうね!!」
「うん!!」

手を繋いだまま軽い足取りで家へと帰る俺とウェンディ。大騒ぎのクリスマスパーティも楽しかったけど、二人だけの時間も楽しいに決まってる。そう思いながら自宅へと向かったのだった。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
すみません、動き出しが遅すぎてギリギリでした。
最後のことなんか考えてなかったのでグダグダですが、シリルのセクシーショットやラッキースケベで楽しんでください。 
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