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八条学園騒動記

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第五百九十一話 巨匠の嫉妬その八

「している暇がないのかな」
「そうだとするとかえって凄いね」
「手塚治虫はあれだけの地位になってね」
「それでずっと漫画描いていたけれど」
「それでも嫉妬した」
「これはこれで凄いけれど」
 それでもというのだ。
「手塚治虫は天才じゃなかったのかな」
「そうかも知れないね」 
 ジョルジュはジミーの言葉に頷いた、そうしてそのうえで彼の方からジミーに対してこんなことを言った。
「本当に凄い人はもう自分の世界がしっかりあって」
「それでなんだ」
「もうそれが揺るがなくて」
 そうしてというのだ。
「そのことにひたすら脇目も振らずね」
「他人のことも目に入らないで」
「それでいつもやっているから」
 だからだというのだ。
「もう嫉妬なんてね」
「最初からなんだ」
「ないのかもね」
「だから手塚治虫は天才じゃない」
「常識人だったのかな」
「そうかもね」
 ジミーはジョルジュの言葉に頷いた。
「本当の天才はもう頂点にいてそれに何とも思わずそれを続ける」
「死ぬまで」
「それこそ漫画家だと」 
 手塚治虫の話をしているのでこの分野を話に出した。
「漫画を描かずにはいられない」
「そんな人だね」
「手塚治虫も相当描いていたにしても」
 徹夜も珍しくないまでにだ。
「描かないと苦しくて仕方ない」
「そこまでじゃなかった」
「そういうことかな」
「そうなるかもね」
「そういえば」
 ジミーはふと気付いてジョルジュに話した。
「野球漫画でも野球漬けの人生に疑問を持つとか」
「そんな展開あるね」
「才能ある主人公でもね」
「それで将来どうしようかってなるね」
「そんな展開があるけれど天才だと」
 本当の意味でのそうした立場の者はというのだ。
「もうね」
「野球漬けの人生にも疑問を抱かず」
「野球を続けていく」
「そうなるね」
「天才だと」
「そしてひたすら楽しんでいく」
 ジョルジュは言い切った。
「それが天才だね、努力ですらも」
「努力と思わないで」
「ひたすらそれをしていく」
「まさにそれが主役」
「そういうことだね」
「何かお話がね」
「先生から思わぬ方向に行ってるけれど」 
 二人はここで立ち止まった、そうして。
 一緒に見せの中を見回した、するとジョルジュはその先生がまだいるのでそれでジミーにどうかという顔で言った。
「何かあの先生がコーヒー飲んでると」
「風格あるね」
 ジミーもこう言った。
「随分と」
「そうだよね」
「何というか」
「ヤクザ屋さんがね」
「喫茶店で一人で飲んでいる」
「学校の先生に見えないね」
「実際にだよ」
 ジョルジュは紅茶を作りつつ話した。 
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