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山々ガール

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第四章

「だからね」
「そういえばそうだったわね」
 唯も言われてこのことを思い出した。
「私が一緒に登ってって言って」
「あの流れだとそうなるよね」
「そうよね」
「けれど僕が返事するんだ」
「駄目かしら」
「返事なんて一つしかないよ」
 順一の今の言葉は真剣なものだった。
「それこそね」
「じゃあその返事は」
「また一緒に登ろう」
 順一が言う唯一つの返事はこれだった。
「そうしよう」
「それじゃあね」
「是非ね、また赤城山登るのかな」
「次は別の山にね」
 唯は自分に一歩踏み出してきた順一に答えた。
「登りましょう」
「それじゃあね」
「そして何時かは」
「何時かは?」
「私富士山登りたいから」
 言わずと知れた日本で最も高い山であり聖地ともされている山だ。火山でもありよく何時また噴火するかと言われている。
「よかったらね」
「富士山もだね」
「その時宜しくね」
「こっちこそね、じゃあ僕登山のこと勉強するから」
「そうしてなのね」
「一緒に山を登ろう」
「そうしましょう」
 唯はにこりと笑って答えた、そしてだった。
 順一は唯と交際することになった、学校ではいつも二人で一緒にいて休日には山に登る様になった。
 その中でだ、彼は友人達に笑顔で話した。
「山登りもいいよな」
「佐々さんと二人で行ってるよな」
「いつもな」
「そうしてるよな、休日は」
「これがまたいいんだよ」
 満面の笑顔での言葉だった。
「山に登って身体動かして景色楽しんで」
「頂上まで登ってか」
「そうしてか」
「弁当食べて」
 そしてというのだ。
「それで下りる時も景色を楽しんで」
「そうしてか」
「山を楽しんでるんだな」
「最後の最後まで」
「山を下りるまでね」 
 その時までというのだ。
「そうしてるよ、それでその山登りが楽しんだ」
「そうなんだな」
「テニスとまた別の楽しみ見つけたんだな」
「おまけに唯ちゃんとも付き合う様になった」
「そうなんだな」
「いいことが二つあった」
 順一は微笑んで話した。
「今の僕はそうだね」
「ったくよ、幸せ過ぎるだろ」
「じゃあ俺も山登り好きな娘に告白するか?」
「そうするか?」
 周りはそんなことを言いだした、順一はそんな彼等に何はともあれこれはと思った娘に告白してその娘の趣味を一緒に楽しんだらとアドバイスをした、そして休日はいつもだった。
 唯と山登りを楽しんだ、それは彼にとっては最高のデートになっていた。そして平日はそのデートを待ち遠しく思う様になっていた。群馬のある高校生達の青春の一幕である。


山々ガール   完


                  2020・9・16 
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