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雨降り小僧

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第二章

「そこでやり過ごそうぜ」
「仕方ねえな」
 こんなことを話しながらだった、二人で雨宿り出来る場所を探した。そんな中で勇吉はふとだった。
 雨の中を歩いている青い着物の小僧、頭から傘を被ったその小僧を見てだった、小僧に対して言った。
「坊主、家は何処だ」
「家?」
「おう、何処だ」
 こう小僧に問うた。
「一体な」
「家は浅草だけれど」
「浅草か、後で返しに行くからな」
 こう言うとだった、勇吉は。
 その手に持っている傘を見て言った。見れば二つあった。
「その傘貸してくれ、一つな」
「おいらの傘を?」
「そうしてくれるかい?」
「いいけれど」
 小僧は勇吉に怪訝な顔で応えた。
「どうなっても知らないよ」
「この通りだ、雨をどうにかしたいからな」
 それでというのだ。
「一つ貸してくれ」
「そこに二人で入るんだ」
「おう、おめえは一つ持ってるし頭にも被ってるしな」
 その傘をというのだ、見れば小僧の目は大きくしかも口と頬の間の皺が深く童顔だが随分と年寄り臭くもある。不思議な顔だった。
「本当に後で返すからな」
「傘を一つなんだ」
「貸してくれるか」
「本当にいいんだね」
「いいってことよ、じゃあな」
「それじゃあ」
 小僧は傘を一つ差し出した、そしてだった。
 勇吉はその傘を受け取った、そのうえで早速田助を入れる形で開くとだった。
 何と傘から土砂降りの雨が降った、それで勇吉は思わず言った。
「おい、傘ささねえほうが雨ましだぜ」
「何でいこれは」
 田助も雨に滝に打たれた様にあたって言った。
「傘の外よりひでえじゃねえか」
「それがおいらの傘だから」
 小僧は怒る二人に言った。
「開いたら雨が降るっていう」
「そんなおかしな傘があるか」
「あるよ、だっておいら雨降り小僧だから」
「雨降り小僧?」
「妖怪だよ、おいら」
 小僧は自分のことを話した。
「実はね」
「そうだったのかよ」
「雨が出ると外に出て来るね」
「それで傘はか」
「開いたらそこが土砂降りになるね」
「そんな奴なのかおめえは」
「そうだよ」
 こう勇吉に話した。
「おいらは」
「それで傘を貸すことに渋ったのかい」
「お兄さん達が雨避けたいみたいだったから」
「そういうことかい」
「悪いことしたね」
「いいさ、無理に言ったのはおいらだ」
 勇吉は謝る妖怪に笑って返した。
「そのうえでのことだからね」
「そう言ってくれるんだ」
「気にするねい」
「おう、俺もその傘に入ったしこいつを止めなかったから同じだ」
 田助も勇吉を見つつ雨降り小僧に話した。
「濡れたのは手前のせいさ」
「そうなんだね」
「だから気にするな」
 田助もこう言った。
「いいな」
「それじゃあね」
「まあ傘は返すな」
 勇吉は傘を閉じて妖怪に戻した。 
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