長生き出来た犬
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第三章
「九十七歳でな、やっぱり亡くなられる直前までしっかりしていたらしいんだ」」
「お二人共長生きだったのね」
「ああ、部長は末っ子でお歳を召してからだったらしいけれど」
それでもというのだ。
「しっかり育ててもらったそうだし。お家は天理教の教会で」
「そういえば天理教の人長生きされるわね」
「そうした人多いよな」
「教会の人で多いわね」
「それでお二人共長生きされて」
そしてというのだ。
「ミュウもな」
「しっかりとなの」
「育てておられたらしくて」
「それで今も元気なのね」
「そうみたいだな、ちゃんと食べさせて散歩もさせて」
それでというのだ。
「だから元気みたいだ」
「そうなのね」
「考えてみたら」
ここで夫はこうも言った。
「犬の十三歳は人間だと六十八歳だな」
「そうよね」
「今六十八歳って」
その年齢ならというのだ。
「しっかりしてるな」
「そうね、今はね」
「昔はもうかなり衰えていたけれどな」
「今は六十八歳位だと」
「しっかりしてるな、だからミュウもな」
「しっかりしてるのね」
「そんな九十過ぎまで元気な人達に飼われていたし」
それならというのだ。
「ミュウもな」
「元気なのね」
「ああ、長生きする人に大事に飼われていたらな」
「お爺さん犬でも」
「まだまだ元気なんだろうな」
「そうなのね」
「それじゃあな」
夫は妻に笑って話した。
「ミュウはずっとうちでな」
「元気なままでね」
「一緒にいるか」
「そうするといいわね」
妻は夫に笑顔で答えた、そしてだった。
一家でミュウと一緒に暮らし続けた、ミュウは十三歳どころかだ。
家の息子達が小学校から高校に上がっても元気だった、それで四十代になった真弓も彼とコロにこう言った。
「今日もお散歩行くわよ」
「キャンキャン」
「ワンワンッ」
二匹で彼に応えた、そしてだった。
ミュウは自分より十歳年下の家族と仲良く散歩を楽しんだ、散歩から帰ると水を飲んだが実に井伊飲みっぷりであった。
長生き出来た犬 完
2020・11・26
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