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おっちょこちょいのかよちゃん

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92 合唱コンクールへの道

 
前書き
《前回》
 日本赤軍の総長・重信房子は赤軍の一人・和光晴生に東京で連続企業爆破事件を起こす東アジア反日武装戦線と協力関係を築く為に彼らとの交渉を命じる。そして日本で東アジア反日武装戦線と接触する事に成功した和光は赤軍と東アジア反日武装戦線の同盟を結ぶ事に成功する。一方、かよ子の隣人のおばさんの次女・ありが夫の悠一と共に東京へ訪れるのだった!! 

 
 ありは羽田空港付近のホテルより外出した。
(それにしても見つけられるかしら・・・)
 その時、シャクシャインが現れた。
「あら、シャクシャイン、来てくれたの?」
「うむ、私以外でも来ておる。尽力する」
「ありがとう」

 三河口は登校しながら東京に滞在中の従姉の事を気にしていた。
(ありちゃん、大丈夫かな・・・?)

 かよ子のクラスではクリスマス合唱コンクールに向けての学級会を行っていた。学級委員である丸尾末男とみぎわ花子が教壇の前に立つ。
「皆さん、静かにしてください!今からクリスマスに行われる合唱コンクールについて決めたいと思います」
「歌う曲は『大きな古時計』です」
「ズバリ名曲でしょう」
 児童達からはシケた歌とか良い歌とか意見は様々だった。
「ピアノ係は誰がいいか、立候補を決めてください」
 その時、お金持ちのお坊ちゃま、花輪和彦(はなわかずひこ)が立ち上がった。
「Hey、ボクがやろうじゃないか。ボクは3つの時からギルバート先生にpianoのlessonをして貰っているのさ。自慢じゃないけどもうモーツァルトも弾けるんだよ」
「そのギルバート先生って何人?」
 まる子が聞いた。
「イギリス人さ」
「何で日本の清水にいるの?家出?」
「しっ、知らないよ。ボクはprivacyにはかかわらない主義なのさ・・・」
 花輪は返答に困った。他のクラスメイトからも怪しまれたり不安の声が挙がった。
「きっ、キミ達、別にボクの先生が誰だって別にいいじゃないか。こんなpianoの上手いボクがclassにいた事だけでもluckyだと思いたまえ・・・」
 花輪は何とかその場を凌いだ。
「では次に独唱してもらう人を決めて貰います。ほんの一小節ですが、独唱の部分があるのです。1番、2番、3番一人ずつお願い致します」
 だが、独唱に名乗り出る者は勇気がないのか、面倒臭いだけなのか、ただ歌に自信がないのか、なかなか出てこなかった。
「では、推薦をお願い致します」
「はい」
 女子の一人が立ち上がった。
「私は女子では山田さんがいいと思います」
「え・・・、私?!」
 かよ子が自分が指名されて少し焦った。
「歌のテストでもいい声してたしね」
「賛成」
(私が・・・、できるかな・・・?)
 かよ子はおっちょこちょいな自分に独唱などできるか不安だった。
「大丈夫だよ、かよちゃん、いい声してるもん」
「頑張れよ!」
 皆は周囲から期待と応援の声が飛ぶ。
(それなら・・・)
「ズバリ、山田さん、やってくれますね?」
 丸尾も確認を取る。
「はい、頑張ります」
(よーし、おっちょこちょいしないように練習しないと!!)
 かよ子は燃えた。そして次に他2名の独唱者の選定に行く。そんな中、藤木はある事を考えた。
(そうだ、僕が行ってみようかな。それなら笹山さんも見直してくれるかも・・・)
 藤木はそう思った。
「あ、あの、僕がやります!!」
 藤木は名乗り出た。しかし、皆から不安の声がでる。
「藤木で大丈夫かしら?」
「あいつ歌のテストでズル休みしたそうだしな」
 藤木はかよ子の時とは完全に正反対な反応に体が震えた。
「う・・・、何でもないです・・・」
 藤木は引き下がるしかなかった。そして別の女子が立ち上がる。
「笹山さんがいいと思います」
「笹山さん、よろしいですか?」
「はい」
 藤木は笹山を羨ましがった。
(いいなあ、笹山さん・・・。僕もなれば一緒に頑張ろうってなれたのに・・・)
 会議は続く。
「では、男子が欲しいのですが・・・」
 はまじが提案する。
「丸尾、お前学級委員なんだからやれば?」
「エエー、私が!?私、歌だけはちょっと・・・」
 その時、ブー太郎が提案した。
「大野君がいいと思いますブー。前の歌のテストで大野君、凄い上手くて先生に褒められてたブー」
 他の生徒達も賛成する。
「俺?」
「大野君、ズバリ、やってくれますね?」
「おう、しょうがねえなあ」
 大野は賛成した。
「その他の人は高音部と低音部に分かれてください」
 この時、まる子とたまえ、杉山は高温、ブー太郎、藤木、長山は低音となった。
「藤木君」
 藤木は永沢に呼ばれた。
「あ、永沢君、君も低音なんだ。頑張ろうよ」
「君こそ、足を引っ張らないでくれよ」
「う・・・」
「それに君、独唱に立候補しただろ?歌のテスト当日に休んだ君みたいな卑怯者なんかじゃ務まらないよ。仮に練習しても本番で怖くてずる休みして逃げるかもしれないかもね」
「う・・・」
「永沢君、そんな事まで言わなくもいいでしょ!」
「さ、笹山さん・・・」
「藤木君だって頑張れるよ。藤木君、頑張ってね」
「う、うん、僕、頑張るよ。笹山さんも応援するよ!」
「ありがとう」
 藤木は笹山に庇って貰って申し訳ないと思いながらも笹山と話せて嬉しかった。一方のかよ子は大役に抜擢されたやる気と責任感に満ちていた。
「山田あ、お前、独唱やるんだろ」
「す、杉山君・・・」
「頑張れよな、応援してるぜ!」
「うん、ありがとう!」
 かよ子は好きな男子に励まされた事で嬉しくなり、もっとやる気になるのであった。

 ありと悠一はシャクシャインと会話する。
「それで、私達にどうやって始末できるのかしら?」
「その事であるが、これを渡したいと思う」
 シャクシャインがありに渡したのは宝石が沢山繋がった首飾りだった。
「このタマサイには各々の(カムイ)の魂が籠っておる。『エク・カムイ』と唱えればその場で対応した(カムイ)が出てきてくれる。そしてお主は煮雪ありの夫の者・煮雪悠一であるな?お主は確かアイヌの末裔だと聞いた。お主にはこれを授ける」
 悠一に渡されたのはブレスレットのような物だった。
「このテクンカネは我々の世界の人間を呼び起こし、共闘をしてくれる。ここの世に滞在する者もいるので、きっと誰かが助けに来てくれるだろう」
「ありがとう」
「ところで、私達がその過激派と巡り合うタイミングなんだけど・・・」
「それについては向こうの世界でフローレンスという者とイマヌエルから聞いた。彼らはこの地にいる異世界の杯の所有者を襲撃する事を目的としているとの事だ。その者の住む地で迎え撃てばよい」
「了解。ありがとう」
「私も行こう」
「そうね」
 三人は出発した。

 かよ子は家に帰ると早速歌の練習をしていた。
(歌詞を間違えないように、音を外さないように・・・)
 かよ子は自主練を続ける。おっちょこちょいをしない為に・・・。 
 

 
後書き
次回は・・・
「迎え撃ちを図れ」
 ありが東京で戦う事で不安を募らせる三河口は従姉の無事を祈るしかできなかった。そしてありとその夫・悠一は東アジア反日武装戦線と交戦する事になるが、さらにその裏では・・・。
  
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