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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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親への感謝の気持ち~そして…

<グランバニア>
ポピーSIDE

「「「「「お父さん、何時もありがとう!」」」」」
私達はグランバニア城の中庭で、お父さんに手作りクッキーを手渡している。
「お父様ぁ、これからも頑張ってくださぁい」
「ありがとうマリー…お父さん頑張っちゃうよぉ!」
お父さんはマリーからクッキーの入った袋を受け取ると、中から一つ取りだし食べ、彼女を抱き締めながらお礼を言う。
「お父さん、これ…ポピーさんほど美味しく出来なかったけど…」
「そんな事ないよ。フレイの作ったクッキーは美味しいよ。ありがとう」
やはり一つ食べ、フレイを抱き締め感謝を述べる。
そしてリューノ・リューラ・リューナと続き、お父さんはそれぞれに感謝の言葉をハグと共に返す。

「父さん、これは僕から…あ、ハグはいらないから…」
「うん。僕もお前は抱きたくない!………つーかお前、顔色悪いよ?大丈夫か?」
昨晩から体調の悪いティミーも、自作のクッキーを手渡しその場から少し離れる。
どうやらクッキーの匂いを嗅ぎたく無いようだ。
重傷ね…


「お、お父さん…これ…私の…」
リュリュは恐る恐るクッキーの入った袋を差し出す…
「ありがとうリュリュ」
誰もが固唾を呑んで見守る…
お父さんは袋からリュリュ作のクッキーを一つ取り出し眺める…見た目だけはリュリュの作品で一番の出来だ。
そして徐に口に入れ、ゆっくりと味わった。
昨日のティミーを思い出す…
泡をふいて倒れたティミーを…

「………うわ~…まずっ!」
あはははは、流石お父さん!正直すぎる!!
作ってくれた娘の前で普通は言わないもの!
「うぇ~ん…ごめんなさい!そんな物食べちゃダメです!やっぱり私はダメなんです…だからパンツをあげます!お父さんに私のパンツを…い、今脱ぎますから!!」
大好きなお父さんへ、手料理を振る舞えない不甲斐なさからか、昨日の集大成がこの程度の所為なのか、リュリュは泣きながらパンツを脱ごうと、スカートの中に両手を入れる…

「リュリュ…ありがとう」
だがお父さんはパンツを脱ごうとするリュリュを抱き締め、優しく感謝の言葉を口にした。
「料理が苦手なのに、いっぱい頑張ったんだね…お父さんは凄く嬉しいよ!バレンタインデーにプレゼントするお菓子は、味なんてどうでも良いんだよ…一生懸命頑張って作ったと言う心がこもっていれば!」
「そうよリュリュ。重要なのは心なのよ…お父さんへの感謝の気持ちと言う…」
涙の止まらないリュリュを横目に、最後は私のクッキーを手渡した。

「ありがとう…来年の今頃はグランバニアからラインハットになってるんだな…」
「うふふ…寂しい、お父さん?」
「………寂しくは…ないかな…何時でも会えるしね!ただ…」

「ただ?」
「ヘンリーの事を『お義父さん』と呼ぶんだと思うとムカつく!あんなヤツ『クソオヤジ』で良いからね!」
「あは…あはははは!」
私は感極まり、お父さんへ抱き付いた。
そして止め処もなく涙が溢れてきた…
私もお父さんが大好きだから…
優しいお父さんが…格好いいお父さんが…

一緒にいると、何時も楽しいお父さん…
結婚したら、私はラインハットで暮らす事になる…
お父さんとは何時でも会えるけど、常に会えるわけではない…

結婚する事に嫌になったわけではない。
コリンズ君の事は大好きだし、新しい家族も優しいだろう…
でもお父さんと離れる事が、こんなにも悲しいなんて…
私はお父さんに抱き付いて泣き続けた…
お父さんは優しく抱き締め、気の済むまで泣かせてくれた…

お父さんは知っていただろうか…本当は私もファザコンなのだ…
初めて会った時から、私はお父さんが大好きなのだ。
お母さんと再会した時、私は悔しくてティミーを誘い夫婦の邪魔をした!
それでもお父さんは何時もと変わらず、私に優しくしてくれた。
「お父さん…何時までも…私のお父さんで居てくれる?」
「ポピー…お前が嫌がっても、僕はお前のお父さんで居続ける!」
うん。お父さん大好き!


私が泣き止んだのを確認すると、お父さんはみんなを集め語り出す。
「みんな、今日はありがとう。今日は最高に幸せな日だ!…みんなは会った事ないから知らないだろうが、お父さんのお父さん…つまりパパスお祖父ちゃんは凄い人だった。僕は未だにパパスに勝てないでいる…でも一つだけ、パパスに勝てた事を今日実感した!僕の子供は、皆素晴らしいという事だ!それだけは勝てたね!」
お、お父さん…それって…





さて、お父さんも渋々政務に戻り、私達はリビングで談笑している…
「ポピーちゃん、みんな…ありがとう。お陰で私もクッキーを渡す事が出来たわ」
アレをクッキーと呼んで良いのなら、成功なのだろう…
「それとティミー君…本当にありがとう。ティミー君が味見してくれたお陰で、どうにか食べられる物を作れたわ」
「そんな…僕は別に…リュリュの努力のお陰だよ」
お礼を言われたティミーが嬉しそうにリュリュを褒める…
するとリュリュがティミーにキスをした!

「私のファーストキスよ…私の不味いクッキーを、食べ続けてくれたティミー君にあげる……本当にありがとう」
私はコレがいけないのだと思う…
これでまたティミーの心はリュリュから離れなくなるだろう…
もしかして、ワザとティミーの心を弄んでいるのか?
だとしたら相当な悪女だぞ…
私やマリーなど足下にも及ばない…
もしそうだと、この先また面白くなるのだが…

うん。今後はティミーに優しくしてあげた方が良いかもね…せめて私ぐらいは…
………ま、いっか…ティミーだし!



~追伸~

私はコッソリとリュリュのクッキーを一つだけ抜き取っておいた…
ティミーを呼び、キッチンで試食するつもりだ!
「ティミー、お父さんは不味いとは言ってたけど、何時もと何も変わらずに一個食べきったわよね…」
「ん?うん…そう言えば…」
「これ…見た目だけじゃなく、味も挽回出来たのかしら?」
そう言うと私とティミーはクッキーを砕き、一つまみの欠片を口にする…
「「う゛っ!」」
私達は慌てて流しに顔を突っ込み、全てを吐き出してしまった…

「おぇ…ゲホゲホ…な、何でお父さんは、顔色一つ変えずにコレを食べれたの?」
「僕にだって分からないよ…あの人は全てが常人じゃないんだよ…」
これが娘を愛する親心なのかしら…
やっぱりお父さんは凄いわ…



 
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