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戦国異伝供書

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第百十二話 はったりその六

「今は全く語かれておらぬな」
「政に専念されていますな」
 信長はとだ、政宗は父に答えた。
「左様ですな」
「一気に大きくなられてな」
「それで、です」
「大きくなられてそれでか」
「そのあまりにも拡がった領地をです」 
 元服した時は尾張の半分程であったのが今では天下の三分の一近くである、僅か七年でそうなってというのだ。
「優れた家臣の方々も多いので」
「それで、じゃな」
「その方々も使われて」
 そうしてというのだ。
「今はです」
「その領地を治めることに専念されておられるか」
「おそらくあと数年はです」
 それ位の間はというのだ。
「戦は一切されず」
「そうしてじゃな」
「はい、政に専念されて」
「国を整えられるか」
「田畑に街、堤や道をよくし増やされて」
「そうしてであるな」
「城も築かれなおされて」
 その様にしてというのだ。
「治める仕組みも整えられて」
「それでか」
「数年かけてそれを行われて」
「それからか」
「また動かれるのは、その間にです」
「我等はか」
「大きくなりましょう」
「織田家が今のままであるうちにか」
「その政が終われば今の倍以上いえ三倍の力を手に入れられるでしょうが」 
 信長、彼はというのだ。
「我等もです」
「強くなるか」
「織田家の天下布武はこれからです」
 彼が言う天下統一はというのだ。
「それは長い時間がかかるので」
「そうなるな」
「間違いなく」
「織田家の周りは強い家が多いな」
「武田、上杉、毛利。そして本願寺もありますので」
「そうそうはか」
「あれ以上大きくなることは難しいかと」
 あと数年政に専念して今より遥かに大きな力を得てもというのだ。
「最後は勝たれてもです」
「長い時がかかるか」
「ならば我等はその間にです」
「大きくなるか」
「そう考えています、それで鉄砲も」
 この武器もというのだ。
「鉄砲鍛冶達に弟子も取らせてです」
「鉄砲を教えさせておるか」
「それで鉄砲鍛冶を増やす様にもしていますので」
「百からか」
「さらに増やし」 
 そしてというのだ。
「その八千丁もです」
「実際に揃える様にするか」
「そうします、織田家の鉄砲は数千に達してさらに増えていますが」
「当家もじゃな」
「その様にします」
「そういうことであるな」
「二万の兵がいれば千ある様にします」
 その鉄砲をというのだ。
「千丁あれば奥羽はです」
「我等以外に鉄砲を持つ家は殆どないしな」
「ならです」
「その千丁の鉄砲も使ってか」
「奥羽を一つにし」
 それからもだ、政宗は話した。
「東国にも入ります」
「そうするか」
「はい、では次はです」
何処を攻めるのか」
「次は畠山、二本松家ともいいますな」
「あの家か」
「あの家にです」
「話をするか」
「それで従えばよしですが」
 それでもというのだ。 
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