おっちょこちょいのかよちゃん
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85 虚しき勝利
前書き
《前回》
運動会は昼休憩となり、昼食を食べたかよ子は、午後に行う沖縄民謡を披露する。その時、まる子が踊りを間違える失態を犯してしまう。そして大玉転がしではたまえと組んだかよ子はおっちょこちょいをする事なく白組の勝利に貢献する。そして大野と杉山達男子勢は騎馬戦に臨む!!
大玉転がしを終えたかよ子達は退場していく。そして次は3年生男子の騎馬戦だった。大野、杉山を始めとする男子達は全員集合した。
「皆、兎に角恐がるなっ。ピンチになったら俺か杉山が助けに行く」
「俺か大野は絶対助けに行くからな。ヤバくなったら呼べよ」
「分かったな」
こうして3年生男子の騎馬戦が始まった。
(す、杉山君、頑張って!!)
「大野くう~ん、頑張ってえ~」
冬田は大声で応援した。
「僕、大丈夫かな・・・」
藤木は杉山の馬係だった。
「藤木、弱気になるなよ。俺がいるんだからさ。笹山もきっと見直してくれるぜ」
「う、うん・・・」
大野の組、杉山の組は次々と紅組の騎馬を落としていく。その時、丸尾がやられそうになった。
「ヒエエエエ~。大野君か杉山君、ズバリピンチでしょう。助けてくださ~い!!」
丸尾は悲鳴を挙げながら助けをむ。大野と杉山はそれぞれと取っ組み合っている相手から離れて丸尾を助けに行こうとした。
「ヒエ~、もう駄目~」
その時だった。
「待たせたな」
大野と杉山の騎馬が援軍として訪れた。
「お前丸尾をいじめるなよ」
「俺達のクラスの学級委員なんだぜ」
こうして丸尾を襲っていた紅組の騎馬は倒された。騎馬戦は続く。白組は善戦だったが、紅組も盛り返す。制限時間もあと僅かとなる。だが、あと3分となって大野が取っ組み合っている所・・・。
「げっ!囲まれた!!」
大野の騎馬が紅組の騎馬4組に包囲されてしまったのだ。
「杉山ーーー!!」
大野が杉山を呼ぶ。しかし、杉山は離れた所で別の騎馬を倒した所だった。杉山は振り向くと、大野が劣勢でやられている。
「おい、大野の騎馬を助けに行くぞ!」
「うん!」
杉山を乗せている前方の藤木は大野の方向に向けて急いだ。だが、遅かった。大野は倒された。
「お、大野くう~ん!!いやあ~」
冬田は悲痛な声を挙げた。
「くそお、よくも大野をお!!やるぞ!」
杉山は大野の仇を1名倒した。そしてもう1名を。そして時間が終わった。白組の勝利だったが、大野がまさか倒されるとは誰にも思わなかっただろう。
(くそお、間に合わなかった!!)
杉山は大野を助けられなくて悔しかった。かよ子も勿論好きな男子の心情は読み取れた。
(杉山君・・・。大野君を助けるのに間に合わなかった・・・。悔しいよね・・・、杉山君・・・!)
(よかった・・・。僕は最後まで杉山君を倒れなかった。笹山さん、僕の事、見直してくれるかな・・・)
杉山と騎馬を組んでいた藤木は笹山から褒められる所を妄想した。杉山は大野を心配しに行く。
「大野お!」
「杉山・・・」
大野は立ち上がった。
「おめえ遅いんだよ!なんでもうちょっと早く来なかったんだ!!ちきしょう・・・!!」
杉山も大野にキレられて謝る気になれなくなった。
「バカヤロー、俺の力を借りなきゃ負けちまうお前なんて最初っから弱いんだよ!!」
杉山は心にもない事を言ってしまった。
「何だと、コノヤロー!!」
二人の喧嘩が始まった。
(本当は、俺だってお前を助けたかったんだよ・・・!!)
「おい、やめろよ!!」
「やめるブー!」
他の男子が喧嘩を止めようとした。4組の男子は険悪なムードで退場する形となってしまった。応援席に戻っても取っ組み合いの喧嘩は続いた。二人の喧嘩を止めるのに女子達も止めようと必死になった。かよ子も勿論止めに入った。だが、中に割って入った時、大野の手の払いがかよ子の顔に当たってしまった。
「かよちゃん!!」
まる子が心配した。
「私はいいから二人の喧嘩を止めて・・・」
取っ組み合いは何とか収まったが、大野と杉山の仲がすぐに修復する事はなかった。なお、藤木は・・・。
「笹山さん、僕、何とか杉山君と騎馬組んで生き残ったよ!!」
「うん、お疲れ様。でも、あの二人が喧嘩して大丈夫かしら・・・」
「あ・・・」
藤木は笹山から思ったほどの労りは受けられなかった上に、笹山は大野と杉山の喧嘩の方を気にしていた為、少し寂しく思った。自分が空気を読まない行動を取った事もあるが、本当に運の悪い男子である。
そして、2年生の背負い籠ボール入れも、4年生女子の玉拾い競争(玉入れに使用した球を制限時間内に可能な限り集める競争)、4年生男子のバケツリレーも、そして全学年生が参加する大玉送りも、二人は全く話もせず、お互いそっぽを向いた。
「大野君と杉山君め、こんな時に内輪揉めするなよ」
観戦してる三河口も愚痴をこぼした。
「だよな、あれじゃあ、負けちまうぜ」
「大丈夫かしら・・・」
結果はかよ子達4組がいる白組が僅差で勝利した。しかし、他のクラスは大喜びしたものの、4組だけは誰も笑っていなかった。大野と杉山が喧嘩した事を引きずっていた為に。
(杉山君・・・。大野君・・・)
かよ子も勝ったのにどうしても嬉しくなかった。運動会は閉会した。かよ子と長山は片付け係の為、競技で使用した用具・機材などを倉庫や放送室に戻す作業をしていた。用具の片付けが全て完了すると、かよ子は長山と話しながら教室に帰る。
「長山君・・・」
「何だい?」
「杉山君と大野君、大丈夫かな?」
「さあ、それは自然と仲直りするのを待つしかないかもしれないね。無理に仲直りさせようとしても余計に怒らせるだけだと思うよ」
長山もそのくらいのアドバイスしかできなかった。
「うん・・・」
教室に帰ってもしーんとした感じだった。そして帰る。その時、かよ子は思い切って杉山を追いかけた。
「す、杉山君・・・!!」
「山田・・・。お前、頑張ってたな」
「うん、でも・・・。最後の大野君との喧嘩・・・」
「ああ、あいつが勝手に怒ってただけさ。ごめんな、お前にまで迷惑かけちまって」
「でも、杉山君も大野君から離れてた所にいたから間に合わなかったのは仕方ないよ。杉山君のせいなんかじゃないよ!」
「あ、ああ、だが、大野との事から離れさせてくれ」
「うん・・・、じゃあね」
かよ子は杉山と別れた。
「はあ〜」
勝ったのに憂鬱なんて本当に虚しい勝利であるとかよ子は思った。
「杉山君と大野君が喧嘩して落ち込んでんのかい?」
「え?」
三河口が待ち構えていたように現れた。
「辛いと思うけど自然に仲直りするのを待つしかないだろうね。俺的には途中で『別の敵』が来なかったのが不幸中の幸いだが」
「う、うん、そうだね」
「まあ、何かの縁で仲直りするだろ」
三河口はそう言いながらかよ子にジュースを奢った。
「だといいんだけど・・・」
「でもかよちゃんも頑張ってたし、かよちゃんも誕生日が近いだろ。かよちゃんのお父さんとお母さんもウチのおばさんもおじさんもかよちゃんの誕生会やろうって話になってんだ。どうかな?」
「あ、うん、ありがとう・・・!!」
かよ子は息苦しい事を乗り越え、そして今度は自分の誕生会の事を考えるのであった。
後書き
次回は・・・
「かよ子の誕生会」
かよ子はまる子やたまえ、ブー太郎を誕生会に誘う。そして、かよ子は杉山を誘いたいのだが、勇気が持てず、ブー太郎に代理を依頼することになる。そしてかよ子の誕生会が行われる・・・。
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