おっちょこちょいのかよちゃん
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82 北海道と沖縄
前書き
《前回》
かよ子の通う小学校では運動会に向けた準備が始まった。片付け係を担い、早朝の練習に参加するかよ子は東京に住む安藤りえから返事が届く。東京では都内のビルの爆発が相次いでいると知る。かよ子の母・まき子は東京のりえの母に電話し、極座暴力集団、別名・東アジア反日武装戦線によるものと知るのであった!!
授業が終わり、かよ子は片付け係の為校庭に集合して道具の片付けの手順を他の学年・クラスの片付け係と共に聞いていた。
(終わった・・・。間違えないようにしなきゃ・・・)
かよ子は長山から声を掛けられる。
「山田、もしかしておっちょこちょいしなか心配なのかい?」
「うん・・・」
「大丈夫だよ。なんかあったらこっちも手伝うよ」
「あ、ありがとう、長山君・・・」
かよ子は教室に戻って下校しようとする。
「おっ、長山、山田、帰って来たか」
「うん」
大野が皆に呼び掛ける。
「おし、皆、明日は皆で沖縄民謡の練習をするからな。特にさくら、明日は絶対遅刻するなよ」
「は、はい・・・」
まる子は指摘されてギクッとした。そしてかよ子はまる子にたまえと下校した。
「まるちゃん、今度は遅刻しちゃだめだよ」
「う、うん・・・」
そんな時、二人は校門にてある光景を見た。
「ああ、藤木と笹山さんだあ〜」
「仲良く歩いてるね」
三人は二人の会話を盗み聞く。
「藤木君、今日朝から頑張ってたわね」
「あ、うん、でも、へましないかな」
「そんな事考えないでよ。私も応援してるから、一緒に頑張ろうね」
「うん、ありがとう」
藤木は照れていた。
「藤木君、この前の文化祭で笹山さんに気持ち伝わったんだね・・・」
「ああ、あの時だね、あの後、大変だったけど・・・」
「でも藤木も笹山さんともっと仲良くなれて良かったんじゃないの〜」
「う、うん、そうだよね・・・」
かよ子は自分と藤木を重ね合わせた。自分だって好きな杉山と仲良くなれてどれだけ嬉しい事か。藤木も好きな女子に想いが伝わってよかったと心の中で安心するかよ子であった。
かよ子は下校した。
「只今」
「お帰り、かよ子」
「お母さん、明日も早朝練習やるから早めに家出るよ。明日は沖縄民謡の練習するよ」
「はい、はい、あ、そうだ。りえちゃんの返事について今日東京のりえちゃんのお母さんと電話したわ」
「え・・・、それで!?」
「東京の事件は『東アジア反日武装戦線』って組織が起こしてて日本赤軍とは関係ないって」
「ひがしあじあはんにち・・・?」
かよ子には名前が長すぎて頭に入らなかった。
「要はね、今の日本のやり方に歯向かってる組織なの。あと北海道出身の人も含まれててね、その人達の人権を取り返そうとする目的もあるのよ」
「北海道の人の人権・・・?」
「北海道には昔、アイヌって民族が住んでいたのよ。でもそのアイヌの子孫の人がアイヌ人だって事で仕事が貰えなかったりする差別が起きてたの。それでアイヌの人権を守れって事なのよ」
「そんな事があったんだ・・・」
「かよ子は運動会で沖縄民謡を踊るって言ってたわよね?実は沖縄にも似たような歴史があるのよ」
「沖縄にも・・・」
「沖縄は昔は日本じゃなくて琉球王国って独立した国だったの」
「リューキューオーコク・・・?」
「そうよ、でもその後、日本の領土の一部になったんだけど、戦争で一度、アメリカの領土になってたの。一昨年、沖縄が日本に戻って来たのよ。でも、沖縄県は他の県とはとても離れているから、文化とかも違う事が多いし、方言の関係でも普通の日本人とは差別されて来たのよ」
「そんな事があったんだ・・・。お母さん、私、その沖縄の人の気持ちも持って沖縄民謡を踊るよ!!」
「うん、それがいいわね」
(よし、明日も頑張って早起きするぞ・・・!!)
かよ子は日本国内で起きていた差別問題の現実に少し感傷的になりながらも明日の早朝練習に備えた。
隣の羽柴家。そこの甥・三河口は電話で名古屋に住む従姉・さりと話していた。
『健ちゃん、酷い文化祭だったわね。響君にイジメられて、赤軍まで襲ってきて・・・』
「まあ、何とかなりましたが・・・」
『私も行きたかったな、文化祭・・・』
「はい、そちらは今の所は問題ないですか?」
『名古屋は今は何ともないよ。もし何かあったら護符の能力で健ちゃんやかよちゃんを呼び出すかもしれないわね』
「ですね、それでは」
お互い電話を切った。今の所、三河口には敵が攻めて来るような違和感は感じてはいなかった。
かよ子は運動会の練習や準備などで疲労が溜まっていた為、9時半過ぎと早めに寝た。ベッドに入るとすぐに寝てしまった。そして、6時20分頃に起きた。今度は母に起こされた。
「ごめん、お母さん!寝坊するところだったよ」
もし母が起こさなかったら、あるいはその時点で目覚めなかったら遅刻は確定だったろう。
かよ子は急いだ。7時15分と集合の15分と何とか間に合った。一方、丁度はあはあと息を切らしながら昇降口に入ってきた者が二名。藤木と山田笑太だった。
「あ、山田、藤木君、おはよう」
「あ、山田かよ子〜。オイラ、ねぼうしちゃったじょ〜」
「僕もだよ・・・。ハア、ハア」
三人は急いで教室に向かった。皆着替えてる途中だった。かよ子達も急いで着替えた。校庭の場には大野と杉山が既にいた。
「あ、杉山君、大野君、おはよう・・・」
「おう、山田あ!今日も頑張って早起きしたか!」
「うん、でも今日はちょっと寝坊しちゃったよ・・・」
「まあ、でもおっちょこちょいしなかったじゃねえか」
「え?う、うん、そうだね・・・」
クラス全員が集合した・・・、と思いきや、また一名来ていなかった。昨日大野に遅刻を指摘、警告されたばかりのあの女子だった。言われても暖簾に腕押しでは流石に大野と杉山も頭に来るであろう。ランニングと準備体操を終え、沖縄民謡の踊りの手順を確認した。そして、一通り踊ったところでようやくまる子が来た。大野は当然激怒する。
「バカッ!!あれほど遅刻するなって言っただろ!!!」
そしてまる子は一人、ブー太郎に踊りを教えて貰っていた。副隊長・杉山が呼びかける。
「その他の者はもう一度初めから踊るぞ。いいな!」
皆は沖縄民謡の練習を再び行う。かよ子は昨日の母の北海道のアイヌや沖縄の人の差別の話を思い出した。沖縄の人々も同じ日本の、いや、地球人の一員なんだと思いながら踊りの練習に励むのであった。
なお、この日は民謡を踊る時の布が先生から配布され家に帰って衣装の縫いを母にやって貰たのだった。そして男女とも毎朝、競技も踊りの練習も懸命に励み、まる子は毎日の如く遅刻しながらも運動会の日は近づいて行くのだった。
後書き
次回は・・・
「運動会の開幕」
森の石松は三河口達にかよ子の小学校の運動会の警護を依頼する。そしてかよ子達3年4組は全力を尽くすと誓い合う。そして児童達の保護者達も訪れた中、運動会が開会される・・・!!
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