どんな困難も
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第二章
「デート行くわ」
「冗談抜きにいいデートになることを祈るわ」
「何もないね」
「そうしたデートにね」
友人達も亜希に言った、そうして亜希は交際相手である一文字隼とデートすることになった。一文字は一八〇の背にアメフトで鍛えた肉体と日本人にしては彫のある顔立ちと白い肌黒く整えた髪の毛ときらきら光る黒い目を持つ青年だ。亜希と同じ高校で同じ学年だ。
その彼が待ち合わせ場所に来た亜希にこう言った、亜希は黒のキュロットと赤いシャツ白のハイソックスでお洒落をしているが。
胸には十字架とお守り、右手にはお経左手には天理教の経典を持っている亜希を見てどうかという顔になって彼女に問うた。
「あれかな、ひょっとして」
「今日のデートはなにもない様にね」
「神様仏様にお願いするんだ」
「いつも絶対に何かあるから」
それも幾つもだ。
「私不幸に遭う体質だから」
「それはわかるけど」
交際しているだけに一文字も亜希の不幸体質は知っていて頷いた。実際デートをしていても学校で一緒にいても亜希は不幸に遭い続けている。
「幾ら何でもね」
「やり過ぎかしら」
「ちょっと以上にね」
それはというのだ。
「そうだと思うよ」
「それはわかっているけれど」
「いつもみたいに不幸に遭わない為に」
「今朝も起きたら」
亜希は困った顔で一文字に話した。
「横浜サヨナラ負けしてたし」
「亜希ちゃん横浜ファンだしね」
「朝からそうしたニュース観たし」
新聞でだ。
「だからね」
「デートの時はなんだ」
「もうね」
それこそというのだ。
「不幸に遭いたくないの」
「そういうことなんだ」
「だからフル装備で来たのよ」
「心霊スポットに行くんじゃないんだから」
「行くのは博物館だからね」
「うん、そんな危ない場所じゃないよ」
一文字はこのことを言った。
「安心して行こう」
「博物館だと何もないかしら」
「そうだよ、まあ確かに何もないといいね」
「ええ、神様と仏様にもお願いして」
そしてとだ、こう言ってだった。
亜希はフル装備は背中のリュックに入れてそうしてだった。
デートをはじめた、するとすぐにだった。
亜希は擦れ違いの人とぶつかった、しかもその人がアイスを立って食べていたので服にアイスが点いた。ぶつかった人はすぐに謝った。
「す、すいません」
「いえ、少しですし」
見ればアイスが溶けた雫が一滴点いた程度だった。それに亜希もこうしたことはいつもなのでいいとした。
「別に」
「そうですか」
「お気になさらずに」
「本当にすいません」
その人はすぐにスプレーを出して亜希の服の汚れた部分を濡らして拭いた。これでこのことは終わった。
とりあえずはよくなった、だが。
亜希は今度は額に突然風に吹かれて来た葉っぱが当たった、その葉っぱはすぐに払ったがそれでもだった。
アイスに続いてなのでこう言った。
「またね」
「まあ気にしないでね」
「デート続ければいいわね」
「うん、別にね」
一文字は彼女に横から言った。
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