自分勝手な母親と心優しい娘

「それでまた栄子ちゃんがね」
「あの娘がか」
「ちゃんとね」
「事実を言ってるんだな」
「学校でね、そこからお子さんからね」
「ママ友に伝わってか」
「事実がわかって」
　それでというのだ。
「私への誤解もね」
「ないんだな」
「そうなったの」
「よかったな、しかしそんなお母さん持って栄子ちゃんも大変だな」
　夫は娘である彼女のことを心配した。
「幾ら何でも酷いな」
「そうよね、本当にあんなお母さんからね」
「そんないい娘が生まれて育ってるんだな」
「あの娘はあのままでいて欲しいわね」
「本当にそうだな」
　夫婦でこんなことを話した、そしてだった。
　後にその母親がどうなったのか、妻は夫に話した。
「ホストに貢いでるのがわかってね」
「離婚か」
「そうなったわ」
「そうか、只性格が悪いだけじゃなくてな」
「浮気に浪費もあって」
　それでというのだ。
「そうしてね」
「それでなのか」
「ええ、本当にね」
　それこそというのだ。
「あのお家もね」
「厄介な人が去って」
「平和になったみたいよ」
「それは何よりだな」
「ママ友の間でも嫌な人がいなくなってね」
「喜んでるんだな」
「そうなっているわ」
　こう夫に話した。
「本当にね」
「それは何よりだな」
「栄子ちゃんは今もメリーのところに来てね」　
　その娘のことも話した。
「一緒に遊んでるわ」
「それはいいことだな」
「ええ、じゃあね」
「これからもな」
「栄子ちゃんにはね」
「うちでメリーと遊んでもらうか」
「そうしてもらうわ」
　夫に笑顔で話した。
「これからもね」
「それはいいことだな」
　夫も笑顔で頷いた、そしてだった。
　栄子はメリーと遊び続けやがて彼女の家には継母が来た、その継母は穏やかで優しい人で栄子にもいい母親で。
　ママ友の間でも評判がよかった、そしてメリーとも仲がよかった。もうあの母親のことは誰も言わなくなった。


自分勝手な母親と心優しい娘　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２０・１０・２６