子猫から飼うと
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第四章
「あれは使うとな」
「穴二つですね」
「人を呪うと穴二つ」
王は李に強い声で告げた。
「そうじゃな」
「はい、よく言われますね」
「猫の呪いの話をしたが」
「猫鬼ですね」
「あれはどうなった」
「隋代の独孤陀ですね」
「あの者は事実が発覚して失脚したな」
義理の姉である独孤皇后を呪殺しようとしたのだ、その他にもこの人物は様々な邪な行いを繰り返していたという。
「そうだったな」
「はい、呪いはそうなりますね」
「人を呪うとな」
まさにというのだ。
「必ず自分にも降りかかる」
「だからすべきでないですね」
「魔術も正しいことに使え」
「それが一番ですね」
「若し悪い方に使うとな」
「自分も悪くなりますね」
「そうなるからだ」
だからだというのだ。
「絶対にするな」
「わかっています」
「そういうことでな、だからあの猫もな」
「文天祥もですね」
「そうしたことに使う様にな」
「その名前に相応しくですね」
李はここで彼の名前について言った。
「文天祥だから」
「文天祥は南宋に最後まで忠義を尽したな」
「清廉潔白で強直でした」
「そのせいで損もしたが」
「そして命も失いました」
「しかし素晴らしい人物だった」
王も言うことだった。
「だからな」
「その文天祥の様にですね」
「正しい様にな」
「そうしていきます」
「おいご主人」
ここでその文天祥字はにゃん助が李の足元に来て言ってきた。
「そろそろ飯の時間だぞ」
「ああ、じゃあミルクだな」
「くれよ、ただもうミルクからな」
「猫の離乳食か」
「それに切り替えてくれよ」
「わかったよ、しかしどっちがご主人かわからないな」
「猫はこうした生きるものだよ」
文天祥は悪びれずに返した。
「だから宜しくな」
「ああ、わかったよ」
「そうだ、猫はそうしたものだ」
王も言ってきた。
「そのことを頭に入れて一緒にやっていくのじゃ」
「そうします」
李は師匠の言葉にも頷いて一旦席を立った、そうして文天祥にミルクをあげた。そのうえでまた酒を飲み師と話をした。
子猫から飼うと 完
2020・10・21
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