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氷の龍は世界最強

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ステータス

 翌日から訓練と座学が始まった。
 まず、俺たちに12センチ×7センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒たちに、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
 彼、メルド団長は俺たちにフランクな話し方をする。
 どうやら、戦友に丁寧な口調で喋るのは違和感があるらしい。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。『ステータスオープン』と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
 アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属たちが地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
 と、納得した奴らが多い。
 すると、俺たちは各々に指先に針を刺して、血を魔法陣に擦りつけて表を見る。
――――――――――――――――――――――
氷川蒼汰
年齢:17歳
性別:男
レベル:?
天職:死神
筋力:200
体力:200
耐性:120
敏捷:110
■■:?
■耐:150
技能:■■(剣術)・瞬間移動・■■刀『■■■』・■■操作・縮地・豪腕・全属性適性・全属性耐性・精神耐性・状態異常耐性・言語理解
――――――――――――――――――――――
「・・・・・・なんだこれは」
 映し出されたステータスがあまりにも実感が湧かない。
 死神っていうのがよく想像するアレか漫画などに出るアレかのどっちしかない。
 おそらく、前者だろう。
 俺がプレートを見ている中、メルド団長が口を開いた。
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に『レベル』があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
 つまり、俺の潜在能力は未知数というわけか。
 レベルが不明なのはそういうことだろう。
「次に『天職』ってのがあるだろう? それは言うなれば『才能』だ。末尾にある『技能』と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は1000人に1人、ものによっちゃあ10000人に1人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが・・・・・・100人に1人はいるな。10人に1人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
 話を聞いても俺の天職の意味合いが分からない。
 俺の才能はいったい何なんだ?
 もしかして、あの夢と関係しているのか?
「後は・・・・・・各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
 そう言うとあのバカが颯爽として前に出た。
 まあ、どうせ、彼奴が勇者なんだろうな。
 だって、メルド団長が元気そうに褒めていたからだ。
 そうこうしているうちに俺の出番だと言わんばかりに視線が集まっている。
 俺は渋々、溜息をつきながらメルド団長にプレートを見せた。
――――――――――――――――――――――
氷川蒼汰
年齢:17歳
性別:男
レベル:?
天職:死神
筋力:200
体力:200
耐性:120
敏捷:110
■■:?
■耐:150
技能:■■(剣術)・瞬間移動・■■刀『■■■』・■■操作・縮地・豪腕・全属性適性・全属性耐性・精神耐性・状態異常耐性・言語理解
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「ほぉ、勇者も凄かったがお前も凄いな。全ての項目が勇者を越している。技能も結構ある・・・・・・が、隠蔽されている上にレベルが不明なのはどうしてだ?」
「知りませんよ」
 俺はそう言い返すしかない。
 だが、周りはヒソヒソと話し始める。
 どうせ、「天才は違う」とか「氷川は超人だ」とか言っているんだろう。
 やはり、天才は孤独をうむものだな。

 最後に残ったのが南雲と愛子先生だ。
 南雲に関しては錬成師とぞんざいに扱われている。
 現に檜山たちがゲラゲラと弄っている。
 全く、それが白崎への評価を下げていることが分からないのかね?
 これだから、バカは嫌いだ。
 なので、俺が檜山たちから南雲のプレートを奪い取り、南雲に返した。
「あ、ありがとう・・・・・・」
 南雲は急な行動に目を丸くして、なんとか言葉を絞り出したようにお礼を言う。
「おい? 氷川なんのつもりだテメェ?」
「お前らこそ、なんのつもりだ」
 ガンを飛ばしてくる檜山に俺は冷徹な瞳で見下ろしている。
「くだらないことしかやらない子供か。時と場合を考えろ。まあ、子供の上にバカだから。それは分からないだろうけどね。それにこんなことをして自分の評価が悪くなることにも理解していない凡人以下のバカの頭は沸いているのかな?」
「なんだと!? テメェ、俺よりもステータスがちょっと高いからって調子にのんなよッ!?」
 この程度で激昂して殴りかかってくるとは――。
 なんだ、そのストレート。
 この世界に来てからもそうだが、米国で強盗の銃弾を軽々と躱せた俺の目は冴えている。
 バカの動きは遅く見える。
 俺は檜山の右腕を掴んで、柔術の一本背負いからコマンドサンボの肘鉄を顔面に食らわせる。
「ブッ!? てめぇ・・・・・・ッ!!」
「お前。自分が小物だとというのを理解できないのか?」
 近くでは天之河のバカが止めに入ろうとしたが、先客がいた。
 ウガーッ! と割って入ってきたのは愛子先生だ。
「こらっーっ! クラス同士の喧嘩なんて先生が許しませんよッ!!」
 ぷりぷりと怒り出すも俺から見たら、さほど、大人としての威厳がない。
 だけど、面倒くさくなったので俺は檜山をそのまま投げ飛ばした。
「愛子先生の言うとおりだ。喧嘩は良くない。これからは助け合っていくんだ」
「・・・・・・」
 その顔とお前の性格が言うことかね。
 もういいや。
 俺が何を言おうとバカに付ける薬はない。
 くだらないと呈してさっさと引っ込んでいく。
 バカは俺の反応にまだなにか言いたげだったが、檜山のバカが騒ぎ出したので、そっちに徹した。

 その後、愛子先生が南雲を励まそうとするも、彼女のプレートを見せたが、逆に撃沈させられたのは別の話だ。

 一方、王国の方にやって来ていた濡れ烏の長髪の男の娘。
 彼は広間に集まっている蒼汰たちを見て
「あれが今回の一件で呼び出された少年少女たちか」
(見たところ、それなりの力を有しているけど・・・・・・精々、平隊士ぐらいの実力だが・・・・・・問題は、あの銀髪の少年。彼から発する莫大な霊力と霊圧・・・あれは、隊長格のレベル。生まれながらにして霊感を持ち、類い希な潜在能力を持っている)
「彼をこんな所で燻らせるよりも十三隊で連れて行った方が光るかもしれないな」
(まずは彼を死神としての道に進ませる必要がある。そのために《《一度、死んでもらわなければ》》・・・さて、どうしよう・・・)
 男の娘は頭を悩ませるのだった。 
 

 
後書き
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