おっちょこちょいのかよちゃん
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72 武装の能力(ちから)
前書き
《前回》
文化祭を楽しむかよ子達は、徳林奏子から三河口が見知らぬ男に連れ去られたという話を聞き、三河口の捜索を行う。冬田が三河口のいる場所を確認し、皆で向かった所、現場では三河口が理不尽に暴行されている様を見る。暴行の相手はなんと三河口の兄・三河口響だった!!
なお、このエピソードより三河口健の兄・三河口響という男が登場しましたが、本作においては「三河口」というのは基本的には兄・響ではなく弟・健の事を指す方針で行きます。
奈美子、利治など一部を除く皆は暴行をする男が三河口の兄と聞いて信じられなかった。
「でも、だからって、どうしてこんな事をするの?文化祭を荒らしてるわけじゃないのに」
かよ子は三河口の兄という男に聞く。
「こいつは俺を怒らせてばっかりだからだよ!こんな奴ここでも迷惑かけやがって!」
三河口の兄・三河口響という男は三河口を非難するだけだった。
「こいつは何にも迷惑かけてねえ!お前が迷惑だろうが!?」
濃藤と北勢田も抗議した。
「うるせえんだよ、高校生の癖してエラそうな口聞きやがって、おめえらぶっ飛ばされてえのか?」
「響君、やめんさい、健ちゃんはそんな事せんよ。昔と違うんだから」
奈美子は事を知っているのか、落ち着いて響を抑えようとした。
「本当かよ?こんなすぐ喧嘩売るような奴がこの学校にいて大丈夫なのかよ!?」
「そういうお前の方こそが三河口さんに迷惑かけてんじゃねえのか!?」
杉山も反論する。
「あ!?んだと!?オメエもぶっ飛ばしてやろうか!?」
響は杉山達の方に向かう。かよ子は杖の能力で撃退すべきか思った。杉山達も「石」を使うか迷った。しかし、相手は日本赤軍でもなければ異世界からの侵略者でもない。無闇に使用するのは避けたいところだった。
(ん、そういえば・・・!!)
かよ子は以前、石松の昔話を聞いていた時に、三河口自身が特異となる三つの能力全てを宿していると石松から聞いた。しかし、なぜ三河口はここではその能力を一切使用しないのだろうか。相手が日本赤軍でも異世界の敵でもないからなのだろうか?
「なら俺達が相手になってやる!」
三河口を救おうと震えながらも立ち向かう濃藤と北勢田。肉弾戦しか術がないかと不安に思いながら立ち向かう大野と杉山。ただ震えるかよ子達女子勢と長山、そして今にも逃げだしそうな藤木。
「濃藤、やるしかねえか」
「ああ」
二人は不祥事で学校から処分を受ける覚悟だった。
「ああ、じゃあ、テメらからやってやるよ」
三人は戦闘態勢に掛かろうとする所だった。が、その時・・・。
「いや、やめてーーー!!」
奏子が叫んだ。その途端、響の体が動かなくなった。そして、勢いよく壁に叩きつけられた。
「お願い、もうこれ以上三河口君や、皆に手を出さないで・・・!!」
響はさらに今度は地面に体を打ち付けられた。
(こ、これは・・・!?)
かよ子はこれは武装の能力だと察した。だが、三河口がやっているように見えない。あの女子高生がやっているかのように見えた。
「これは・・・!?」
「武装の能力・・・」
「三河口君はこの文化祭の準備に一生懸命取り組んでたの・・・。それに三河口君が作った唐揚げはとても美味しくていい評判だったの・・・。だから、三河口君は誰にも迷惑懸けてない!!だから、やめて・・・!!」
「徳林さん・・・」
「そうだ、これ以上ミカワをやるんだったら俺達も動くし、最悪、警察呼ぶぞ!」
「う・・・」
「響君」
隣の家のおばさんは響による。
「私も四、五年健ちゃん預かってるけど、今まで無意味に人を傷つける事はなかったんよ。それにもしそうじゃなきゃ、こんなに友達が出来てないはずよ」
「ち・・・、わかったよ」
響はこれ以上暴力を振るうのを止めることにした。
「折角来たんだし、響君も文化祭楽しんだら?」
「ああ、わかったよ」
騒動は何とか収まった。
その後、響は叔母・叔父と共に回るようになり、弟からなるべく離すようにした。三河口はかよ子達と共に回ることになった。
「なあ、あんた」
杉山が三河口に質問する。
「あの時、あんたの兄ちゃんがやられた時、どうして『能力』を使わなかったんだ?」
「ああ、それはだな、正確には『使わなかった』と言うよりは、『使えなかった』と行った方が正しいかな」
「『使えなかった』だって?」
「お兄ちゃんにも能力が使えない時ってあるの・・・!?」
かよ子は意外に思った。確かにこの男子高校生は丸岡を自身の能力で遠くに吹き飛ばし、夏休みには東京の地でその能力を使用してアドルフとかいう異世界の人間と日高敏彦という日本赤軍の人間を成敗させている。武装、見聞、威圧の能力全てを宿す三河口ならばそれも不可能ではないはずなのだが、なぜできなかったのだろうか?
「ああ、清水に来て能力を無闇に使わないように抑えた結果、何ていうのかな、一般人には効かなくなったようなんだ。もしかしたらこれも君が持っていた杖とか叔母さんが持っていた護符の影響なのかもしれないな」
「う、うん・・・」
「それにさっきの兄貴が抑えつけられたあの様は俺の能力によるものではない」
「え?って事は・・・」
「濃藤も北勢田も何もしてないだろ?」
「あ、ああ」
「となると、奏子ちゃんがやったんじゃないのかい?」
「え?私・・・?」
奏子はその時を振り返った。確かにあの時は三河口を守りたいという一心だった。だが、あんな念力のようにあの男をやっつけるなんて・・・。
「もしかしたらお姉さんにも不思議な能力を持ってるのかもね・・・」
「ああ、武装の能力を持ってるかもしれねえな」
大野は推測した。
「ブソーノチカラ?それって何?」
「相手に触らずとも相手を攻撃したり、防御したりする能力だよ」
かよ子は説明した。
「私が・・・」
奏子は自分がまさかそんな能力があるとは信じられなかった。
「俺も同じ能力を持っているから家族から嫌われて清水に来たんだよ」
「そうだったんだ・・・」
「奏子ちゃん、その子達が君が呼んだ子かい?」
「うん、笹山かず子ちゃんと藤木茂君よ。かず子ちゃんは近所の子で、藤木君は来たいって言ってた子なの」
「そうか・・・。かず子ちゃんか、可愛い子だね」
「え・・・」
笹山は照れた。その一方で、三河口は藤木の方を見た。
「藤木君・・・、どうやら君はかず子ちゃんに惚れてんのかな?」
「え・・・!?」
藤木は急に顔を赤くして恥ずかしがった。
「それで来たかったんじゃないのかい?」
「あ、いや、そんな事・・・」
藤木は誤魔化した。どうして本当の事を素直に言えないのだろうかとかよ子は少し呆れるのだった。
「文化祭は楽しんでるかね?」
「あ、はい・・・」
「いいや、そうでもなさそうですよ。さっきまでゲームやってたんですけど、笹山にいいとこ見せられなくて・・・」
「それで寂しそうにしてましたし・・・」
「大野君、杉山君・・・」
藤木は恥ずかしなった。
「それじゃあ、こうしようか。二手に分かれよう。奏子ちゃん、かず子ちゃんに藤木君と一緒に回ってくれるかな?俺達は残りのメンバーで周るって事で」
「え?うん、いいわよ」
こうして二手に別れる事になった。奏子は笹山と藤木、そして笹山の両親と共に周り、かよ子達と別れた。
「お兄ちゃん、これでいいの?」
かよ子は確認する。
「ああ、あの藤木茂って子が笹山かず子って子が好きそうだって事が大野君と杉山君の発言から読み取れたからね、俺の友達に付き添わせておけば大丈夫かなって思ったんだよ。藤木君にとって良い事になればいいんだが」
「じゃあ、俺達も周るか」
かよ子達も三河口や大野、杉山達と再び文化祭を楽しみ始めた。
後書き
次回は・・・
「二人で楽しめた時」
三河口を発見し、再びかよ子達は文化祭を楽しむ事にする。体育館の所ですみ子達「義元」とも再会をした後、すみ子達は模擬店へ、かよ子達は体育館で演劇部の演劇を見ることにする。そして藤木は笹山と楽しいひと時を過ごせるのか・・・。
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