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戦国異伝供書

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第百七話 国府台の戦いその十二

「我等はです」
「鉄砲もであるな」
「持つべきであり」
「それも多くじゃな」
「はい」
 こう氏康に話した。
「そう考えています」
「そうであるな、ではな」
「当家はこれよりですな」
「揃えられるだけ多くな」
 まさにというのだ。
「鉄砲を揃えるとしよう」
「それでは」
「実際北条の兵は武田の兵より弱い」
 このことは否定出来なかった、氏康も武田の兵のその強さを聞いて知っているからである。そして自分達の兵のこともだ。
「それも遥かにな」
「左様ですな」
「かつて東国武士は強いと言われたが」
「それは鎌倉に幕府の前のことで」
「今はな」
「とてもですな」
「あの頃の強さはなくな」
 そしてというのだ。
「武田そしておそらく長尾の兵よりはな」
「弱いですな」
「しかし戦をするなら」
 その場合はというのだ。
「やはりな」
「勝たねばなりませんな」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「我等としてはな」
「鉄砲もですな」
「よい弓矢と槍を揃えるが」
 それだけでなくというのだ。
「さらにじゃ」
「鉄砲もですな」
「これからはそうしよう」
「それでは」
「これよりはな、しかし鉄砲というものは」
 氏康は鉄砲についてこうも言った。
「若しや使い方によってはな」
「大きな武器になるやもとですか」
「思いまする」
 こう幻庵にも述べた。
「高いものですが」
「それでもですな」
「使い方次第で」
「殿、何でもです」
 丸い顔の男が言ってきた、松田憲秀だ。この者も北条家の重臣の一人で特に政において才を見せている。
「薩摩や上方では鉄砲を造る鍛冶職人が多くおり」
「それでか」
「その者達が鉄砲を造り」
 そうしてというのだ。
「島津家等ではです」
「鉄砲を多く持っておるか」
「その様です」
「左様か、島津家ではか」
「あの家では」
「古い家であるな」
 島津家について氏康はこう述べた。
「昔からあの地の守護である」
「鎌倉の頃より」
「うむ、非常に古い家であるが」
「その島津家ではです」
「鉄砲鍛冶が多くおってか」
「造っておる様です」
 その様だというのだ。 
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