戦国異伝供書
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第百七話 国府台の戦いその七
「よいな」
「はい、それでは」
「その様に」
「時は来た」
まさにというのだ。
「だからな」
「はい、これより」
「一気に駆け上がり」
「そうしてですな」
「敵陣を破りますな」
「そうする、しかもじゃ」
綱成はさらに言った。
「風は我等にとって追い風」
「相手の弓矢の力は弱まる」
「そのこともよいですな」
「ではですな」
「今より」
「攻めるとしよう」
こう言ってだった。
綱成は軍配を振り下ろしそうして自らも馬を駆って自身が率いる軍勢に台地を駆け上がらせた。すると。
数が減っていた敵軍は綱成の軍勢の突進を防ぎきれず破られた、氏康は敵陣が破られたのを見て言った。
「好機じゃ」
「はい、ではですな」
「我等もですな」
「台地を駆け上がり」
「そうしてですな」
「台地に入る、左右に動くを止めて」
そしてというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「台地に入りましょう」
「駆け上がって」
「それではな」
こう言ってだった、氏康は兵を率いてそうしてだった。
綱成の後に続いた、台地に上がった綱成の軍勢は台地で勇敢に戦いそこに自軍の足掛かりを築いていた。
その足掛かりに入ってだ、氏康はあらたに命じた。
「ではな」
「これよりですな」
「国府台の城に向かい」
「そして南で別動隊と対している里見家の軍勢にも向かう」
「そうしますな」
「そうする、では兵を進める」
こう言ってだった、氏康は綱成の率いる先陣と合流したうえで。
周りにいる里見家の軍勢を退けつつだった。
自らは国府台城に向かいまた南の方の敵軍にも兵を向けた、それを見てだった。
負けを悟った里見義弘は急いで城に軍勢を集めてだった、そこから退きはじめた。だが北条家のあまりもの軍勢の動きの速さに。
多くの将兵が討たれ義弘自身這う這うの体で逃げた、それで氏康は城に入り彼の持っていた里見家伝来の宝刀を見て言った。
「この様なものを奪われるまでとはな」
「里見殿もかなりの負けですな」
「はい、かなりの兵を討ち取られ」
そうしてというのだ。
「そのうえで、ですから」
「これは里見殿にとっては痛い負けで」
「当家にとっては大きな勝ちです」
こう幻庵に話した。
「実に」
「これで下総は我等のものとなります」
「そして上総もですな」
「そのかなりの部分が」
「左様ですな」
「これで上野まで手に入れれば」
幻庵は氏康に話した。
「当家は二百四十万石を持ち」
「紛れもなく関東の覇者になりますな」
「ではです」
「これよりですな」
「下総の領有も進めますが」
それと共にというのだ。
「武田家、今川家とです」
「盟約をですか」
「確かに結びましょう」
「三つの家で」
「そうして後顧の憂いを完全になくし」
そしてというのだ。
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