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水着だけは嫌 

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第四章

「全然」
「そう?結構いいけれど」
「私、本当にウエストは」
 そこは必死に否定する優子だった。
「駄目ですから」
「そうは思わないけれどね。けれどまずは入りましょう」
「最初は身体を洗って」
「それで汚れを落として」
 それからだった。
「サウナに冷水にね」
「熱いお風呂にも入って」
「疲れを癒しましょう」
「ですよね。それじゃあ」
「やっぱりお風呂よ」
 志津子は満面の笑顔で言う。いささか親父臭いが今の言葉は風呂好き、それも無類のそれ故に出された言葉だった。
 その顔で優子を風呂場に連れて行く。一歩間違えればかなり怪しい光景ではあるが。
 メイクを落としているので優子だとは中々わからない。それを利用して二人でサウナ等を楽しむ。そして露天風呂にも二人で入る。
 黒い岩場、木々に囲まれたその中にある浴槽に入ってそこでもだ。志津子はにこにことしてこう優子に話した。
「生き返るわね」
「ですよね。本当に」
 今はにこにことして言う優子だった。二人でその浴槽の中に入っている。二人共長い髪は束ねてあげている。どちらのうなじも艶やかだ。
 その中で切れ長な目で隣にいる優子を見てだ。志津子は浴槽の出る場所に背をもたれかけさせ肘をそこにつけてこうも言った。
「最近のスーパー銭湯ってこうして露天風呂もあるからね」
「余計にいいですよね」
「お風呂は何か」
 こうした話にもなる。
「日本文化の醍醐味の一つよ」
「醍醐味なんですね」
「そうよ。これがないと日本じゃないわ」
 大きな胸を風呂の中に浮かべながらの言葉だった。
「もうね。よくぞ日本に生まれけりよ」
「日本にいるからこそですね」
「お風呂も楽しめるのよ」 
 ここまで素晴らしい風呂にだというのだ。こう隣に慎ましやかに入っている優子に話す。ここで束ねている黒髪が一条浴槽にも落ちる。
 だがそれはそのままにしてだ。優子にこうも言った。
「そういえば浴槽の中だとね」
「浴槽の中だと?」
「優子ちゃんほっとした顔になるわよね」
 今の優子の顔を見ての言葉だ。
「そうなるわよね」
「何か。ほっとしまして」
「そうそう。お風呂に浸かると心がほぐされてね」
「そうなりますよね」
「それもお風呂のいいところよ。それでこの露天風呂の次はね」
「何処に入りますか?」
「また水風呂に入って」
 そこで身体を一旦冷やして、であった。
「もう一度サウナに入りましょう」
「はい、それじゃあ」
 優子は志津子の言葉に笑顔で頷く。志津子は優子のその笑顔が大好きだった。この笑顔もまた優子の人気の源だった。
 その笑顔をにこにことして見る。そして。 
 ふと視線を下にやった。そこには優子の一糸まとわぬ姿が湯舟の中にあった。その整っている筈の身体を見て。
 志津子はふと思った。優子の腹のところがだ。
 妙に出ている。そう思ったのだ。
 それで目を凝らした。するとだった。
 出ている。それでだった。
 何気なくを装って優子のその腹のところに手をやる。だが裕子はそれに気付いて咄嗟に後ろに下がる。それでこう言ってきた。
「あの、まさか」
「まさかって」
「見ました!?」
 明らかに見られたくないものを見られた言葉だった。
「私の、その」
「ひょっとしてそのお腹って」
「ずっと隠してたんですけれど」
 また見られなくないものを見られた言葉だった。
「その、私実は」
「お腹出てたの?」
「普段はそうでもないんですけれど」
 言い訳めいた言葉だった。実際そうだった。
「実は。私結構」
「便秘とか?」
「そうなんです。それで便秘になったら」
 女性によくある悩みだった。そしてアイドルも女の子ならこの悩みを持つ娘もいる。優子がまさにその娘だったのだ。 
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