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戦国異伝供書

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第百六話 八万の大軍その十二

「やはり上杉家はな」
「関東から出てもらう」
「そうしてもらいますな」
「攻めて」
「そのうえで」
「そうする、ただな」
 氏康は鋭い顔でこうも言った。
「ここでじゃ」
「はい、里見家ですな」
「あの家がですな」
「次第に下総に勢力を拡げてきましたな」
「このままでは」
「武蔵に近付く、その前にな」
 こう言うのだった。
「戦う、あの家も当家をよく思っておらぬ」
「左様ですな」
「それは明らかです」
「それではですな」
「里見家ともですか」
「戦いますか」
「あの家と戦い」
 そしてというのだ。
「武蔵から引き離し」
「そして下総もですか」
「手に入れますか」
「あの国を」
「そうしますか」
「そして里見家を上総と安房に封じ込めて」
 そうしてというのだ。
「二度とじゃ」
「当家を脅かさぬ様にする」
「そうしますか」
「あの家を攻めて」
「そうしますか」
「そうする、上野と下野に出来るだけ早く勢力を拡げたいが」
 それでもというのだ。
「横から攻められてはじゃ」
「厄介ですな」
「それだけでも」
「だからですな」
「先にですな」
「あの家を叩きますか」
「そして横槍を防ぐとしよう」
 こう言ってだ、今度はだった。
 氏康は綱成を見て彼に声をかけた。
「再びじゃ」
「出陣ですな」
「そしてじゃ」
「里見家を倒す」
「そうする」
 こう言うのだった。
「だからな」
「これからはですな」
「武蔵と下総の境の城にじゃ」
「兵を多く置き」
「そして里見家が動けばな」
 その時はというのだ。
「すぐにじゃ」
「狼煙を上げさせますな」
「その様にしてな」
 そのうえでというのだ。
「何かあればな」
「出陣ですな」
「そうして戦をする」
 こう言ってそうしてだった、氏康は里見家との戦にも兵を向けられる様にした。両上杉を倒した北条家は次はこの家との戦に入ろうとしていた。


第百六話   完


                2020・7・15 
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