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若者は旅立って

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第四章

 ヨハネスブルグでの拠点を得た。そしてヨハネスブルグは噂通りだった。
 ホテルの中だろうが外だろうが暴漢が来る。銃声は止まず常に剣呑な目の者達に見られしかも襲い掛かって来る。だがその都度。
 ボディーガードが守ってくれた。銃弾が良晴に来ても。
 男がその銃弾を素手で止める。男の強さは本物だった。
 そして暴漢達を退ける。だが。
 良晴は男の悪臭に耐える為にガスマスクを外せない。そこから男に問うた。
「あんた何者だ?」
「俺か」
「只の変質者じゃないよな」
 それこそ普通のレベルではなかった。
「そうだよな」
「コードネームはブリーフ13という」
 男は名乗った。
「覚えておくといい」
「ブリーフ13?」
「そうだ」
 それがコードネームらしい。
「俺の名前はそうなっている」
「また凄い名前だな。とにかくな」
「何だ」
「俺のことは守ってくれるんだな」
 この魔界都市の様な町の多くの危険からだというのだ。
「こうして」
「仕事だからだ」
 それでだとだ。その男ブリーフ13は答える。
「だからだ」
「それでか」
「そうだ。御前は生きろ」
 ブリーフ13は良晴に背を向けたまま告げる。見ればブリーフの尻の部分は焦げ茶色に汚れている。前が黄色いのに対して。
「いいな」
「ああ、ところであんたな」
「まだ何かあるのか」
「まあ。本業は聞かないな」
「聞けば御前を消さなくてはならなくなる」
 物騒なことこの上ない返事だった。背中を向けたまま言うとそれは余計に威圧感を出していた。しかもだった。
「後俺の後ろにはだ」
「立つなっていうんだよな」
「今まで立ってはいないさ」
「危険を感じたか」
「というかな」
 何故ブリーフ13の後ろに立たないか、その理由は。
「あんたトイレ行ってお尻とか拭くか?」
「そんなことはしたことがない」
 人間として完全に駄目な台詞での返事だった。
「そういうことはしない主義だ」
「だよな。だからな」
 その茶色い汚れを正面から見たくないからだった。彼の後ろに何があっても絶対に立たない理由はそれだった。
「最初からそうしてたんだよ」
「そうか」
「というか尻拭かないで風呂入らないで着替えないんだよな」
「何もかも全くしない」
「あんた、只者じゃねえな」
 良晴は真剣な顔でブリーフ13に対して言った。
「飯だって前から出して時間通りに食うからな」
「後ろからも出せる」
「遠慮するぜ」
 そんなもの食べられるかというのだ。
「生憎な」
「わかった」
「とにかくまあ。あんたと一緒にヨハネスブルグにいてな」
「安全は守られていると思うが」
「とりあえずはな」
 今も暴漢が来た。しかも五人位でだ。
 しかしブリーフ13はその彼等に股間を向けた。するとブリーフの前の開ける場所から銃身が出てそこから火を噴く。そうして。
 その銃撃で暴漢達の額を射抜いた。それで良晴を防いでからまた言う。
「ここはこういう街だ」
「冗談抜きで核戦争後の世界だよな」
「だからこそ俺が雇われた」
 世界最強の裏の世界の住人だという彼がだ。とはいってもどう見ても世界最悪の変態にしか見えないが。
「御前を守る為にだ」
「感謝はしてるさ」
「感謝する必要はない」 
 それはいいというのだ。
「仕事だからだ」
「それでかよ」
「気にすることはない」
 また言うブリーフ13だった。
「俺は俺の仕事を果たしているだけだ」
「それだけか」
「そういうことだ。それではだ」
「ああ、もうすぐ旅行も終わりだな」
「それまでは守る。何があってもな」
 少なくともブリーフ13には己の仕事に対する責任感があった。そのうえで何があろうとも良晴を守るというのだ。ヨハネスブルグは危険に満ちていた。しかしそれでもだった。 
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