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天使の様な天使

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第七章

「いるでしょうね」
「そのことは認めるんだな」
「それでまた世界ちゃんお家に呼んでいい?」
「ああ、いいけれどな」 
 その彼女はとだ、北条は答えた。
「そうしてもな」
「それじゃあね」
「天使をな」
「天使みたいに凄くいい娘だからね」
 麗奈はあくまでこう考えていた、だが北条は別の考えだった。
 文字通りの天使の心を持つ天使もいる、黙示録にある様な恐ろしい天使だけでなく。そしてもっと言えば日本にも天使はいる。こう考えつつ娘に応えたのだった。
 だがここで麗奈は父にこうも言った。
「ただお酒は飲ませないでね」
「未成年だからか」
「私だって本当は駄目だしね」
 高校生だからである。
「外で飲んでないし」
「そもそも家で飲むのもな」
「滅多に飲まないからいいでしょ」
「そういう問題か?」
「あの娘ワインは主の血だから飲むけれど」
 それでもというのだ。
「飲んだら口調はそのままでも細かくお説教モードに入るから」
「だからか」
「飲ませないでね」
「そうか、何かお説教も天使の仕事だな」
 人を教え諭すことだからだとだ、北条は言った。
「そういえば」
「そこでそう言うの?」
「あの娘は本当に天使なんだな」
「だから天使は日本にいないわよ」
 あくまでこう言う麗奈だった。
「天使の心を持ってるけれどね」
「そうだっていうんだな」
「そうよ、けれどお酒はね」
「ああ、というか最初から飲むな」
 これが娘への返事だった、だがその彼女に。
 北条は三五〇ミリリットルのビールの缶を一本冷蔵庫から出して娘の席に置いてそうしてから言った。
「それでな」
「それで?」
「あの娘ビールも飲むのか」
「修道院で作ってるって言ってね」
 それでとだ、麗奈はそのビールを受取りつつ父に答えた。
「飲むわ」
「それで酔うとか」
「お説教タイムなのよ、穏やかで笑顔だけれど私達のなおすべきところを懇々と言うの」
「穏やかか」
「優しくてね、怒るんじゃなくて諭す様に」
「やっぱり天使か」
「だから天使じゃないって」
 あくまでこう言う麗奈だった、だが。
 北条はわかった、それで娘に世界とこれからも仲良くする様に言った、そうして彼は今はワインを飲んだ。健康のことを考えそして彼女の言う主の血であることも思い出して。


天使の様な天使   完


                    2020・2・19 
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