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大人

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第四章

「いや、全くです」
「本当に変わってしまいました」
「何といいますか」
「鉄の農具は凄いですね」
「それに貴方も働いてくれたので」
「田畑もよくなりました」
「これで、です」
 実にと言うのだった。
「我等は幸せに暮らせます」
「というかこれが普通の暮らしですか」
「周りの」
「そうなのですか」
「そうだ、せめて鉄の農具やこれ位の田畑がないとな」 
 それこそとだ、鬼は彼等に話した。
「駄目だ、それではこれからもな」
「鉄の農具を使ってですか」
「田畑を耕して」
「そうしてですか」
「頑張ってくれ」 
 こう村人達に言うのだった、その鬼に深く感謝してだった。
 村人達は彼を大人と敬意を表して呼び神として祀り神社を建てた。その神社こそが。
「この神社なのです」
「そうなのですか」
「はい」
 神主は山口に微笑んで話した、そして。
 彼に随分と古い農具を見せて話した。
「これがです」
「まさか」
「はい、大人が村人達にくれた農具と言われています」
「そうなのですか」
「本当かどうかわかりませんが」
 それでもというのだ。
「そう言われています」
「では」
「はい、実際に鬼かどうかまでは」
「わかりませんか」
「都の方から来た人か鬼によく言われる」
「渡来したですね」
「そうした人だったかも知れませんが」
 その鬼、大人はというのだ。
「ですが確かにです」
「大人がですね」
「この岩木山の人達を大いに助けてくれました」
「そのことは確かですね」
「そして今のこの地があるともです」
「言っていいのですね」
「そうです」
 こう山口に話した。
「有り難いことに」
「そうですか」
「鬼ですが」
「その鬼がですね」
「この地を作ってくれたともです」
 その様にともいうのだ。
「言えます」
「そうですか、鬼が」
「鬼といっても色々ですね」
「人に害を為すというのが多いですが」
「ですがこうしたです」
「人を助けてくれる鬼もいますね」
「そうしてそうした鬼は」
 微笑んでだ、神主は山口に話した。 
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