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戦国異伝供書

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第百五話 氏康の治その五

「ちょっかい程度です」
「左様ですか」
「ですから」
「両家は、ですな」
「和を結びましたし」
「これで、ですか」
「後は三つの家で確かな名訳を結べば」
 それでというのだ。
「憂いは完全になくなります」
「左様ですか」
「両家は上洛を狙っておられます」
 今川家も武田家もというのだ。
「ご当主殿は」
「上洛をですか」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「天下に号令をです」
「考えていますか」
「左様です」
「武田家は源氏の名門」
 氏康はこの家から話した。
「甲斐源氏嫡流の」
「はい、代々甲斐の守護ですし」
「家柄からですな」
「上洛すれば」
 その時はというのだ。
「管領にもです」
「なれますな」
「左様です、大内家が上洛されて」
「管領にはなれませんでしたな」
「しかし武田家は源氏です」
 将軍家である足利家と同じくだ。
「ですから」
「管領にもですな」
「なれます、あの家の格を考えますと」
「左様でありますな」
「そしてです」
 幻庵から話した、今度は。
「今川家はです」
「三河守護の吉良家と並んで将軍の継承権を持っていますな」
「足利家の分家であられるので」
「では」
「はい、今川殿はです」
 義元、彼はというのだ。
「上洛をされて」
「そしてですな」
「公方様になられるおつもりです」
「大きなことですな」
「両家共」
「はい、しかしでありますな」
「それがしの星の見立てですと」
 幻庵は氏康にあらためて話した。
「やはりです」
「尾張の青い巨星にですか」
「阻まれます」
「そうなりますか」
「青といえば織田家ですが」
「尾張の守護代の家ですな」
「あの家に恐ろしいまでの器の御仁が出られて」
 そしてというのだ。
「天下に大いに名を挙げましょう」
「今川殿や武田殿を寄せ付けぬまでの」
「まさに日輪の如く」
「そこまでですか」
「恐ろしい御仁かと」
「左様でありますか」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「両家は止まるかと」
「尾張に阻まれ」
「おそらく尾張に止まらず」
 その者はというのだ。 
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