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レーヴァティン

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第百七十一話 見破った伏兵その八

「七千で来ているぜよ」
「七千か」
 その数にだ、英雄は目を鋭くさせた。
「一万だったな」
「気付いたのう」
「明らかにだ」
 一万の兵が七千に減っている、このことから英雄はすぐに察した。そうしてそのうえでこう言ったのだった。
「伏兵だな」
「何処かに置いちょるのう」
「やはりな」
「釣り野伏せじゃな」
「それで来ている」
 まさにというのだ。
「あいつ等なりに勝ちにな」
「そうじゃな」
「ならな」
 相手が釣り野伏せで来る、それならというのだ。
「こちらもだ」
「やり方があるのう」
「そうだ、敵がそう来るとわかってだ」
「乗る話はないぜよ」
「あえてな、ならまずは戦ってやる」
 英雄はにこりともせず言った。
「敵軍とな」
「そうしてっちゃな」
「一戦は交える」
 そうはするというのだ。
「そして出来るだけ敵の総大将も捕えるつもりだが」
「逃げたらっちゃな」
「それまでだ」
 こう愛実に返した。
「それでな」
「そうっちゃな」
「だからだ」
 それでというのだ。
「ここは敵が逃げてもな」
「追わないっちゃな」
「急いではな、夜もな」
 先程話した通りにというのだ。
「守りを固めてな」
「追わないっちゃな」
「そうする、敵の策を見抜いたなら」
 それならというのだ。
「あえて乗って逆に破るかな」
「乗らないことっちゃな」
「乗ってもいいが」
 それでもとだ、英雄は鋭い目で話した。そうしつつ今進んでいる道のその遥か先にある甲府城を見ていた。
「今回はな」
「乗らないっちゃな」
「その方がいいだろう」
「何故いいっちゃ」
 愛実は英雄にあえて問うた。
「それは」
「敵は一万のうちから三千の伏兵を置いているが」 
 これは確かだがというのだ。
「あと二千五百程の兵が甲斐にいる」
「他の城や砦を守っているっちゃな」
「その兵達もだ」
「伏兵っちゃな」
「一度釣り野伏せを破っても」
 例えそうしてもというのだ。
「諦めずにまた二度三度とだ」
「残っている兵でっちゃな」
「仕掛けて来るかも知れない」
「釣り野伏せやそれに似た策をっちゃな」
「だからな」
 ここはというのだ。
「あえてだ」
「敵の策を破らずにっちゃ」
「守りを固めつつ進軍してだ」
 敵軍を破ってもというのだ。
「甲府城に向かってな」
「あの城を手に入れるっちゃ」
「そうしよう」
 こう言うのだった。 
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