戦国異伝供書
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第百四話 まずすることその一
第百四話 まずすること
氏綱は氏康が元服するとこれまで以上に体調を崩す様になっていた、それで家臣達にこう言ったのだった。
「やはりわしはな」
「殿、そうしたことはです」
「言われぬ方が」
「言葉は出すと」
「実際のことになるな」
氏綱も家臣達にこう返した。
「言霊があるからな」
「はい、ですから」
「あまりです」
「言われるべきではありませぬ」
「そうであるな、しかしな」
それでもとだ、氏綱はさらに言った。
「思っておることじゃ」
「左様ですか」
「その様にですか」
「思われていますが」
「近頃な、しかしじゃ」
それでもとだ、氏綱は話した。
「先のことは何も心配しておらぬ」
「新九郎様を見ておられると」
「それで、ですな」
「何も不安はない」
「そうなのですな」
「うむ、新九郎は大丈夫じゃ」
まさにとうのだ。
「あの者がいえばな」
「だからですな」
「新九郎さまが継がれれば」
「その時はですな」
「むしろわし以上にな」
氏綱はこうも言った。
「新九郎は家をよくしてくれる」
「ですか、ではですな」
「今はですな」
「新九郎様が主になられた時に備え」
「土台を固めていきますか」
「そうする、父上が北条家を立てられ」
早雲のことも話した。
「そしてじゃ」
「殿がその土台を固められる」
「そうされるのですな」
「そしてですな」
「新九郎様がですな」
「北条家を関東の覇者にする、しかもわしが固めた土台をな」
それをというのだ。
「さらに固めてくれるぞ」
「そうされますか」
「あの方は」
「ただ家を大きくされるだけではないですか」
「うむ」
確かにというのだ。
「あの者の政の才は素晴らしい」
「だからですな」
「政も励まれ」
「そしてですか」
「土台をさらに固めて下さいますか」
「そうなる、だからわしはな」
氏綱はさらに言った。
「わしのすべきことをするが」
「それはですな」
「北条家の土台固めである」
「それをこれからもですな」
「続けられますか」
「もう長くないと思うが」
それでもというのだ。
「出来るだけな」
「そうですか」
「ではです」
「我等もです」
家臣達も口々に言った、そしてだった。
氏綱と共に北条家の政を固めていった、その中で氏綱は里見氏等との戦に勝ち江戸湾の方も勢力圏に収めていった。
その江戸湾の方に氏康は行ってそうして家臣達に言った。
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