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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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天使とラブソングを……?(第2幕)

 
前書き
してやられます 

 
(グランバニア城:宰相執務室)
ティミーSIDE

16時30分……
約束してた時間に、ポピーが旦那を連れてルーラでやってきた。
もう既に仕事を終わらせてた僕とリュリュは、人を困らせる名人の後に連なって人を腹立たせる名人の下に向かった。

彼の部屋に入ると、何かの指示をユニから受けてた上級メイドのジョディーの存在以外は何時も通りの忙しさの様で、この面子が現れたのにもかかわらず一瞬だけ視線を向けただけで皆が仕事にすぐ戻る。「うぉ……何だ?」と言ったのはジョディーだけだ。

例の若造もこちらを見る事無く仕事に没頭している。
僕やリュリュに対しては兎も角、仮にも外国の王族が来てるのだから多少はリアクションをして欲しいと思ってしまう。

「ラインハット王家から非公式だけど相談したい事があるから、仕事の手を止めて黙って私の話を聞きなさい!」
かなり高圧的な口調で我が国の宰相に話しかける外国の王太子妃。国際問題だ(笑)

事態の重要さを理解したのか、はたまた今の台詞で何かを感じたのか、ウルフ君はポピーの言う通り手を止めて話を聞く体勢になった。
彼が素直だと後が怖く感じる。

「実は……」







「……って訳なのよ。何か知恵を出しなさいよ!」
サンタローズの教会の状況・父さんには言えない訳・内政干渉云々……
全てを話し終えてポピーはまた高圧的に参加を強制する。

「リュカさんには絶対聞かせられないなぁ……」
我々入室から初めて声を出したウルフ君……
かなりボソボソと独り言を言い、右手を顎に当て何かを考え出した。

何なんだ?
本当に素直だな今日は……
『俺の知った事か!!』と叫ぶと予想してたのに。

暫く何かを考えてたウルフ君は、突然ハッと何かに気が付き、僕らに視線を向け、その後に彼の机から右に2メートルほど離れた場所に座ってるユニ等に視線を向けて俯き黙る。
暫く沈黙しながらユニをチラチラ気にして、僕らに視線を向けるウルフ君。

右手人差し指をクイクイと動かし僕らに顔を近付ける様に促す。
何だろう?
そんなにも周囲に聞かれては拙い事でもあるのだろうか?

ウルフ君から観て左から、僕・リュリュ・ポピー・コリンズと並んで彼の机越しに顔を近付ける。
彼はユニを気にしながら小声で何かをしゃべってる……だが声が小さすぎて聞き取れない。
思わず我々は更に身体を乗り出した。

すると……
(ぐにゅ!)(むにゅ!)
「きゃぁぁぁぁ!!」「みぎゃぁぁぁ!!」

「俺の知った事か!!」
左手でリュリュの右胸を、右手でポピーの左胸を……
好き放題揉みながら大声で僕の予想した台詞を叫ぶ。うらやま……けしからん!

「お前、何しやがる!!」
「うるせー! 俺の貴重な時間を奪った料金じゃボケぇ!」
僕とコリンズは無料かな?

「だからコイツに相談したく無かったのよ!」
「そう思うなら来るんじゃねー! 乳ばかりに養分を回しやがって、脳にも栄養を分けろ!」
意思を以て配分できたら、如何(どん)なに良いだろうか。

「いいか、絶対にリュカさんにこの話はするなよ!」
「そんな事解ってるわよ! だからアンタんとこ来たんでしょ!」
よく考えたら彼も他国の宰相なんだし、問題になるんじゃ?

「俺んとこにだって来るな馬鹿(ばぁか)! 俺はグランバニアの宰相だ! ラインハットの都市計画に口を出せる訳ねーだろ!」
「んなこたぁ解ってるわよ! でもアンタだったらお父さんと違って手は絶対に出さないから、アイデアだけ貰って使い捨てに出来るでしょ!」

我が妹ながら酷い事を言ってるなぁ……
そう思いながらポピーとウルフ君の口論を眺めていると、突然僕らの後方に視線を向けて叫んだ!
「誰か、そのメイドを捕まえろ!」

「は、はいぃぃぃ!!!」
「き、きゃぁー! どこ触ってんのよ!?」
突然捕縛されるはジョディー。ウルフ君の部下の一人に連れられ、僕らの列に参入する。

「お前、今どこ行こうとした?」
「し、仕事に……決まってんじゃない!」
普通だったら、その通りだ。

「お前の仕事はリュカさんに情報を流す事か?」
「……………」
まさか本当に!? 聞いて無かったのか、コレまでの状況を?

「あのオッサンが手を出したら、間違いなく問題事が増えるんだよ。解ってっか?」
「し、しかし……私は陛下に仕えるメイド。陛下に隠し事など出来ませんよぉ」
物は言い様だ。

「でもジョディー……それは困るのよ、流石に」
「いやでもぉ~……」
流石のポピーも困り顔だ。

「はっ!」
一瞬の沈黙が室内を支配した次の瞬間……
ユニが我々を見下す様な視線で見つめ失笑をしてみせた。ちょっと怖い……

「どいつもこいつも解ってませんわねぇ……リュカ様を!」
「ユ、ユニ……さん?」
僕らほどあの男を解ってる人種は居ないだろうが、突然の豹変にウルフ君も狼狽えてる。

「もうここまで大事(おおごと)になってるんですよ? リュカ様が存じ上げない訳ないでしょう。今頃サンタローズに行ってますわよ」
「な……まさか!!」

ユニの言葉を聞いたウルフ君が慌てて懐からMH(マジックフォン)を取り出す。
そして勿論コール相手は国王陛下。
数回のコール後、我が父の姿が映し出される。

『あれぇウルフ……何?』
父と一緒に背景も映し出されるが、青々しい木々だけで、サンタローズかは判断しかねる。
判るのは室内ではないと言う事だけ。

「リュカさん、今どこに居るんだ!?」
『え~……し、執務室だよぉ~』
何でバレる嘘を吐くんだ?

「サンタローズだな……サンタローズに居るんだな!」
『うぉ、よく分かるね!?』
興奮の余り立ち上がるウルフ君……対照的にすっとぼけてる国王陛下。

「おい、やめろよ! 変な事すんじゃねーぞ!」
『いや、変な事はしないけど……する事はするよ!』
そのする事が変な事だって解らないのかなぁ?

「馬鹿野郎。他国の教会が経営不振になろうが関係ねーだろ!」
『……………え!? フレアさん、経営不振なの教会?』
あれ?

『も~、何で言っちゃうのウルフ君!? 秘密にしてたのにぃ』
MH(マジックフォン)の画面外からシスター・フレアの声がする。
そして辻褄の合わないクレームが……

(ゴトン!)
顔面蒼白なウルフ君はMH(マジックフォン)を手から落とした。
そして自らも崩れ落ちると……
「し、してやられたぁぁぁぁぁ!!!!!」(orz)

何やら悔しそうに絶叫する。
珍しい事もあるもんだ。
だが正直、まだ何が起きたのか理解が追いついてないのだが?

「やるわねユニ……でも……」
理解できてるのかポピーが呟く。
だが表情は思わしくない。

「あら、私の勘違いでしたか……リュカ様でしたら、もう既に全てを存じ上げてると思ってましたのに(ニコ)」
ん? つまり……父さんは先程まで何も知らなかったって事かな?

「ユニさん……解ってるのか? あのオッサンが内政干渉をしない訳が無いって事を!」
「皆様こそ何も解ってらっしゃらない! リュカ様の事なら何でも知ってるぶってますけど、最もキモになる部分を理解して居られません!」
キモ……?

「何を言い出すかと思えば……『リュカ様は神をも凌駕する存在だから、不可能を可能にする』とでも言うのかよ!?」
流石に立ち上がったウルフ君が、何時もの調子で馬鹿にする。

「はぁ? “何を言い出すかと思えば”は、こっちの台詞です。リュカ様にも不可能はあります。ですが他者より可能に出来る事が圧倒的多数存在するのです!」
確かに……言われてみれば。この国の発展だって他者には不可能だったが、父さんだからこそ可能な出来事だ。

「ふむふむ……そうよ、そうなのよ! だからお父さんって凄いのよ♥」
隣を見ると、瞳を輝かせて大きく頷く我が妹が……
また病状が悪化した。

「さ……と言う訳で、偉大なる宰相閣下が機密事項をリュカ様に暴露してしまったので、後は成り行きを見守りましょう。ジョディーも皆も“本来”の仕事に戻り、王家の方々も邪魔ですので解散して下さいませ」
誰もが納得(ウルフ君を除く)し、面倒事から解放されたのを見計らってユニがこの場の指揮を執る。

「偉大で聡明なる宰相閣下も、私如きにしてやられた事を気に病んでないで、仕事に戻って下さい」
「……くぅ~!!!」
悔しそうに唸るウルフ君。

「今日は良い物見れたわね。グランバニアまで来た甲斐があったわ」
「秘密にしてた我々の努力は無駄になったがな」
ラインハットの王太子夫婦は、場の空気を読んだ一言を残し帰国の途についた。

リュリュはユニにしてやられたウルフ君を苛めると思いきや……
「あぁ……お父さんの凄さ再発見!!」
と、既に夢の中に入っていて暇がなさそうだ。

そんな彼女を引き連れ僕も退散する。
以後とは終わってるから、サッサと帰ってアミーの顔を見よう。
もう全部面倒な事は父上に任せて……

ティミーSIDE END



 
 

 
後書き
病状が悪化した娘がひとり……

次回、その母親SIDEからスタート。 
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