あつまれおおかみたちの森 ~南の島に流れ着いた俺が可愛いどうぶつたちとまったりスローライフを目指す話~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
村に着いたよ! (9/11追加)
前書き
トレバーの後を追って林に入っていった「俺」。その先に新しい住民との出会いがありました。
恐る恐る、トレバーの後を辿るように、林の中に入っていく。そんなに距離は無いはずなのだが、道が暗く、そして蛇行しているせいか思いのほか距離を感じる。暫くすると、その鬱蒼とした暗い道の先に明るく照らされた、開けた場所があるのがわかった。俺はその手前でふと立ち止まった。このまま出ていっていいのだろうか?正直、何が出てくるかわからない。そこで、そのまま林から出るのは一旦やめた。念の為、その暗い小道から逸れてあえて藪の中に入っていった。その藪の草むらの中から、光に照らされた林の向こうの場所を覗くことにしたのだ。
極力音を立てずに草むらの中に入っていく。
そこから覗いた光景は・・・村であった。
見たところ、そこには数件の家が建っていた。そして周りには適度に木が生えていて、地面は芝生でおおわれていた。こう書いてみると単なる「集落、村」といった感じなのだが、見た直後に恐ろしく妙な、何とも言えない「違和感」を感じた。
まず全ての家が一軒家で、驚くほどサイズがみな同じだった。それぞれの家の壁の色や材質は違うのだろうが、地面に対して占めている広さ、空間を占めている規模感、そういったものがことごとく均等なのである。それぞれの家が一応個性を主張してはいるが、それは厳格な区分けの中で割り振られた領域を徹底して守っているという感じであった。そして、すべての家がもれなく南向きで、玄関がその真ん中にあるのだ。日本のニュータウンでもこんな画一的にはならないだろう。
そんな具合に、ここの家が全部南向きになっているということに気づいた後、改めて、家の周りにも目をやる。そこで先ほどから感じていた違和感の正体がようやくわかってきた。木々や、地面の草。そういったものもすべて「南向き」なのである。目の前に一本の木がある。南側から見ると緑の葉が全体的にバランスよく生い茂っていて立派な大木なのだが、北側から見ると全く葉の生えていない枝がむき出しの状態になっている。つまり西側に立って見ると右半分は緑が満遍なく付いているが、左側はつるっつる。そんな具合なのである。
「何かのテーマパークか?」
隠れながらふとそう思った。
その時である。
「ヌァー!!!!!ファッーーク!!」
という絶叫の後、数回の銃撃の音が聞こえた。
やはり先にトレバーは来ていたようだ。いよいよ誰かに見つかったら他人のふりをしよう。こうなったら、現地の警察に彼を任せて俺はここから立ち去ろう。一応俺は日本人の漁師という体なので、まぁエンジントラブルで遭難、漂流したと言えば何とかなる。どちらかというと今はあのトチ狂った白人の仲間だと思われる方がまずい。
そんなことを考えていた折、また誰かが近くへ駆けて来る足音が聞こえてきた。身をかがめて息を殺す。恐らく今朝テントに来た子供と似たような連中だと思う。足音が大きくなる。そして、その足音の主が現れた。
今度は明らかに人ではなかった。
「猫?これ猫なのか?」
立っている猫というものを、生まれて初めて見た。猫が2本の足で立って、走ってきたのである。
さらに猫とは言っても、さっきの少年と体型は似たり寄ったりのほぼ二頭身である。着ぐるみと言うには恐ろしく滑らかに、リアルに動く顔面の表情。さらに注意深く見て気付いたのが、この猫目の色が左右で違うタイプのやつらしい。
そして何より・・・。
「なんで、眼鏡にスーツなんだ?」
・・・洋服を着ているのである。
生き物なのかロボットなのか、もはや何なのか分からないが、二頭身のオッドアイの猫が
ビジネススタイルで二本の足で立っている。目の前の光景を説明するとそんな感じであるその時の俺の頭の中は、混乱を通り越して、思考が止まってしまった、という状態だった。一体この場所は何なんだ?俺の知っている「人間」というものは居るのか?果たして、生きて帰れるのか・・・。
色々頭に不安がよぎった次の瞬間である。
「パァン!!」
強烈な破裂音が響く。
と、同時に目の前の猫の頭が破裂した。
「ドシャ!グチャ!」
辺りにその肉片が四散する。
猫が付けていた黒淵の眼鏡も90度に曲がって、俺の隠れている草むらの手前に飛んできた。
「・・・ドサッ!」
頭を失った首から下がゆっくりとその場に倒れ伏した。
血の池が湧き出でて、猫が来ていた白いワイシャツを赤く染めていく。
俺が唖然としていると、
「イェェェス!!ビィィィィンゴォォォ!!!」
最早聞きなれたダミ声が聞こえた。
さっきに比べ、更にTシャツを血で汚したトレバーが、のっしのっしとこちらに歩いてきた。
片手に持った猟銃の銃口からはまだかすかに煙が立っているようだった。
ページ上へ戻る