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戦国異伝供書

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第百三話 緑から白へその十二

「外から助けがなくてはな」
「囲まれていれば」
「やがて兵糧も尽きます」
「そうなってですな」
「遂にはですな」
「そうじゃ、そうなってな」
 そうなってというのだ。
「陥ちる」
「だからですな」
「もうこの小田原城だけになれば」
「その時は終わりですな」
「籠城しても意味がないですな」
「そうなる、そうなった時は負けじゃ」
 小田原城だけになればというのだ。
「最早な、そしてそうならぬ様にすることもじゃ」
「大事ですな」
「まさに」
「そうなりますな」
「だからですな」
「領土を拡げもしますな」
「その様にしていく、兎角言うが小田原城への籠城はな」 
 これはというのだ。
「最後の最後でな」
「みだりにせず」
「それもこの城だけでは出来ぬ」
「そういうものですな」
「そのことは覚えておくことじゃ」
 こう言ってだった。
 氏綱は小田原城の守りも固めていった、そしてだった。
 それと共に戦を続けていった、だがその中で氏綱は徐々にだった。
 身体を崩していっていた、それで幻庵に話した。
「わしは長くないかも知れぬが」
「それでもですな」
「心配はしておらん」
 一切というのだ。
「何もな」
「伊豆千代様を見ていますと」
「うむ、見事にじゃ」 
 まさにというのだ。
「日に日に大きくなっておる」
「だからですな」
「わしがいなくなってもな」
「伊豆千代様が主になられ」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「わしの跡を継いでな」
「政も戦も励まれ」
「そのうえでな」
「両上杉も倒し」
「堀河公方も静かにし」
 そしてというのだ。
「この関東の覇もじゃ」
「手にされますな」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
「一切じゃ」
「心配されておられませんな」
「だからわしは時が来ればな」
「去られますな」
「そしてあちらでこの家を見る」
「安心して」
「そうする、ただな」
 ここで氏綱は弟に問うた。
「お主の星見じゃが」
「尾張のことですか」
「その星はそこまで大きいか」
「はい、まるで天下を覆う様な」
「そこまでの輝きか」
「星というより日輪の様な」
「日輪とな」
「あれだけ大きな強い輝きの星は知りませぬ」
 博学で知られる幻庵でもというのだ。 
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